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ミランの新エース、ピオンテクは
“背番号9の呪い”を解けるのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/09/20 11:40
9月15日の3節ベローナ戦でPKを決めて今季初ゴールを挙げたピオンテク。得意の「ガンマンポーズ」を見せた。
インザーギに呪いについて聞くと──。
手数をかけずに最少タッチでゴールを追求する。敵のゴールエリアという荒野に立つ早撃ちガンマンは、新戦術への適応に苦しんでいる。
「呪い? そんなものあるわけないだろう」
今季、インザーギは2部ベネベントの監督として采配を振るっている。
伝説のストライカーは“呪いの主”扱いに困惑しながら、地元紙のインタビューでオカルトチックな話題をふられると一笑に付した。
インザーギはミラン時代の300試合で126ゴールを奪った。赤と黒のストライプに揺れる白抜きの9番は、11年もの間、インザーギの背中に張り付き、スクデットや2度のチャンピオンズリーグなどあらゆるタイトルをもたらした。
イグアインは半年でミラノを去った。
2012年にインザーギが引退すると、アレシャンドレ・パト(現サンパウロ)、フェルナンド・トーレス(引退)、マッティア・デストロ(現ボローニャ)、A・シウバといったストライカーたちがミランの9番を受け継いだ。そして彼らは当時のチーム事情に翻弄されながら、ことごとく9番の重みに沈んでいった。
昨夏、リーグ最多得点記録を持つゴンサロ・イグアイン(現ユベントス)が来たときには、さすがに奴なら呪いを破ってくれるだろうという淡い期待をミラニスタたちは抱いた。だが、9番はイグアインですら拒絶し、彼は半年でミラノを去った。
気がつけば、インザーギ以降“ヌーメロ・ノヴェ(9番)”をつけた人間の数は昨季までに8人にも上ったが、彼らは誰一人ミランの真のエースになることはできなかった。
ミランに入団した選手は契約のサインをした後、燦然と光り輝くトロフィールームへ案内される。そこにあるのは偉大な先人たちが築いたサッカーの歴史そのものだ。武者震いしない者はいない。