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フェデラー「あれこそがテニスさ」
大坂なおみがガウフに見せた敬意。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/09/02 11:50
女子テニス界の未来を担う大坂なおみとガウフが、一緒にインタビューに答える。2019年全米を象徴するシーンになった。
「自分にファイト、ファイトと」
凡ミスの少なさが武器のガウフよりもその数を抑え、その上でガウフの3倍の24本ものウィナーを放った。ファーストサーブの入りが45%、ダブルフォルト7本というガウフの自滅は、立ち上がりから高い集中力でガウフの勝ち気を砕いた大坂のプレーと無関係ではない。
「こんなに集中した試合はオーストラリア以来」と試合後のオンコート・インタビューで言ったが、そんなに長い間くすぶっていた集中力がここで戻ってきたのはなぜだったのか。
2万3000人を収容するアーサー・アッシュ・スタジアムのナイトセッション。大坂にとって1回戦も同じ舞台だったが、日中の1試合目と違って夜の好カードでは8~9割方埋まる。注目の一戦にスタジアムは熱を帯びていた。
こんな状況でこそ、大坂は底力を発揮するのだ。そしてガウフはまだランキング140位だが、人気も将来性も大坂に負けない。紛れもなくチャレンジャーはガウフであったが、大坂もある意味でチャレンジする立場にあった。
「捨て身で必死に向かってくると思うから、自分にファイト、ファイトと言い聞かせていた」
終われば親友としてふるまえる。
自分自身への挑戦に打ち勝った大坂は、直後、数年来の顔なじみでもあったガウフに対して予期せぬ行動に出る。
ラケットを片付けようとしている彼女のもとに近寄ると、オンコートのインタビューをいっしょに受けようと誘った。「人前で泣くのは好きじゃないし、どうしたらいいかわからない」と最初は断っていたガウフだが、説得されてマイクの前に立ち、泣きながらも自分の声をファンに届けた。
「試合中は相手を最大の敵とし、終われば親友としてふるまえる。それが真のアスリートだと思う。なおみはそれを示してくれた」
ガウフはあとでそう語っている。