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フェデラー「あれこそがテニスさ」
大坂なおみがガウフに見せた敬意。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2019/09/02 11:50

フェデラー「あれこそがテニスさ」大坂なおみがガウフに見せた敬意。<Number Web> photograph by Getty Images

女子テニス界の未来を担う大坂なおみとガウフが、一緒にインタビューに答える。2019年全米を象徴するシーンになった。

フェデラーとゴファンの時は……。

 敗者と勝者がいっしょにインタビューを受けるケースは前例がないわけではない。たとえば、敗者にとっての引退試合というケース。それ以外では、ロジャー・フェデラーとダビド・ゴファンの初対戦となった2012年の全仏オープンが記憶に残っている。

 当時21歳だったゴファンは予選で敗れながらラッキールーザーとして初めてグランドスラムの本戦入りを果たして4回戦まで勝ち上がり、子供の頃から部屋に写真を貼っていたほど憧れていたフェデラーと対戦することになった。

 試合はフェデラーの逆転勝ちだったが、異例のツーショット・インタビューは和やかで愉快に進んだ。

負けて泣いて記者会見は辛い。

 しかしそれはフェデラーが誘ったわけではなく、大会側の計らいだった。今回の大坂のように、インタビューを一緒にやろうなどと自ら誘った勝者が過去にいただろうか。

「負けて、泣いて、記者会見。それはけっこう辛いこと。ココ(ガウフ)の年を考えたとき、彼女のためにも、彼女を見に来た多くの人たちのためにも、先にここで直接話をするのがいいんじゃないかと思った」

 試合後すぐに向かったESPNのブースでも、その後の記者会見でも、そのような説明をした。相手が15歳の子供だからできた行為だったことは確かだが、ESPNの解説者で元世界1位のクリス・エバートは「あんなスポーツマンシップはなかなか見られないわ」と賛辞を直接伝えた。

 テニスは感動的なスポーツマンシップを多く目にするスポーツだが、21歳と15歳という若さも手伝って、それはとても新鮮でドラマチックだった。

【次ページ】 スポーツマンシップの本質とは。

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