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大坂なおみの純粋さは変わらない。
コービーに喜び、ファンと触れ合い。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2019/08/30 19:00
会心のストレート勝ちで3回戦進出を決めた大坂なおみ。世界的アスリートも彼女の戦いぶりに注目している。
騒然とした会場に気圧されずに。
試合後の記者会見では感慨深げに話したが、会場の騒然としたムードに気圧されることはなかったようだ。
「プレッシャーには感じなかった。ただ、この炎天下に長い間座らせておきたくはなかったから、3セット目にはいきたくないと思っていたの」などと振り返り、いわゆる“なおみ節”でも楽しませてくれた。
彼らは、この1年で大坂がさまざまな分野で出会った偉大な人々の中のごく一部なのだろう。
急スピードでセレブの仲間入りをし、人生が劇的に変わった21歳に、自惚れるな、舞い上がるな、初心を忘れるなといっても難しい話。過去に天才だの美少女だのと騒がれて終わった選手の顔は、テニスファンなら1人や2人すぐに思い浮かぶに違いない。
純粋さが分かるファンへの姿勢。
実際のところ大坂も、全豪オープン優勝後に世界1位になってからの半年あまり、自分に起こった変化を消化しきれずに苦しんでいた。
成功の大恩人であったはずのサーシャ・バインを解雇したときには、それこそ<自惚れ>という言葉もついてまわった。ウィンブルドンでの1回戦敗退後の記者会見打ち切り事件では批判も浴びた。
しかし、少なくとも彼女の純粋さと謙虚さは変わっていないと感じることが多々ある。ベタな例だが、まずはファンに対する姿勢だ。
練習のあとなど、大坂ほど長い時間をかけてサインをしたり撮影に応じたりする選手も珍しい。今大会でも、一般のファンが入れる制限エリアぎりぎりのところにひしめき合う人々の呼びかけに応えて、どんどんどんどん歩を進めていく。トッププレーヤー、特に女子のトップとしてはかなり稀な対応だろう。
以前、別の大会では、敗れた直後の帰り際だったにもかかわらず、向かう方角とは違うところで手を伸ばしている3、4人のファンのもとへわざわざ駆け寄って行った。陽はすっかり落ちて、周りに人もほとんどいなかったから、誰の目も意識せずにとった行動だったはずだ。