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奇跡から3年、渋くレスター進化中。
バーディーと新世代が6強体制を崩す。
posted2019/08/31 11:40
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
日本でレスターの知名度が少しだけ上がったのは、1986年だったと記憶している。
同年のメキシコ・ワールドカップで得点王に輝いたガリー・リネカーが7シーズン所属したクラブだと、いくつかのメディアが取り上げていた。しかし、イングランド・フットボールといえばリバプールの時代で、マンチェスターもロンドンも端役に過ぎなかったのだから、レスターといわれてもピンと来るはずがなかった。
その後10年ほど月日が流れ、『ジェイ・スカイB』(現ジェイ・スポーツ)がプレミアリーグの放映権を獲得すると、レスターの名前は徐々に浸透していった。
ロビー・サベージ、エミール・ヘスキー、マジー・イゼットなどを擁し、1998-99シーズンから2シーズン連続でトップ10に食い込む健闘を見せている。2001年には4試合だけロベルト・マンチーニが所属していた。
2007-08シーズンは3部にまで転落。
しかし、小規模のクラブがチーム力を維持できるはずがなく、2003-04シーズンにプレミアリーグから降格。2007-08シーズンにはリーグ1(実質3部)まで転落していった。懸命に建て直し、2013-14シーズンにチャンピオンシップ(実質2部)を制してプレミアリーグに復帰したが、日本のとある専門誌は“レイチェスター”が10シーズンぶりにプレミアリーグ復帰、と報じていた。
要するに、その程度の認識しかなかったということだ。LEICESTER、たしかにレイチェスターと読みたくもなるが……。
ただ、フットボールの神様は“シンデレラストーリー”を用意していた。2014-15シーズンは最終9試合を7勝1分1敗でクリアして残留。続く2015-16シーズンは、岡崎慎司、ジェイミー・バーディー、マーク・オルブライトン、エンゴロ・カンテ、ダニー・ドリンクウォーターと、随所にハードワーカーを擁してプレミアリーグを制したのである。
下馬評では降格候補のひとつに挙げられていた片田舎のクラブが、世界一の競争力を誇るプレミアリーグのテッペンに立ったのだ。シニカルな英国メディアも「ミラクル・レスター」と表し、その快挙を称賛していた。