フランス・フットボール通信BACK NUMBER
なぜ欧州覇権はセリエからリーガに?
時代を変えた、ジダン移籍の裏話。
text by
ロベルト・ノタリアニRoberto Notarianni
photograph byFranck Nataf/L'Equpe
posted2019/08/25 20:00
ジダンはレアルで220試合以上の出場を記録。2002年にはCL制覇も果たしている。
「彼の家では妻がズボンを穿いている」
とはいえユーベとの離婚の原因を、ジダンの妻に求めるのはあまりにうがちすぎというものだろう。
たとえ「彼の家では妻がズボンを穿いている(妻が夫を支配している)」とアニェリが語ったにせよ、そこにはメディア的な誇張も多分に含まれている。
いずれにせよジダンにとって、妻の母国スペインで「新たなチャレンジを望む」のは正当な権利であった。
トリノでの生活に軋轢はなかった。私生活は快適で、人目を忍んで引きこもる必要はまったくなかった。行きつけのレストラン「ダ・アンジェリーノ」には彼専用のテーブルが常に用意され、彼の名前がつけられた料理がメニューに加えられたように、ストレスを感じることなく日常生活を営むことができた。
ユベントスが移籍金をあてにしていた節も。
他方でユベントスは、ジダン自身が当時の『フランス・フットボール』誌のインタビューで述べているように、彼の移籍によって得た金で、2~3人の選手を補強しようとしていた。
実際にユーベがレアルから得た7620万ユーロの移籍金は、全額がジャンルイジ・ブッフォン(5230万ユーロ)とリリアン・テュラム(4040万ユーロ)、パベル・ネドベド(3810万ユーロ)の獲得に充てられた。
何よりも重要であったのは、ジダンがまるで裏切り者であるかのように見なされたことだった。
ユベントスにとっては、ジダン移籍はそんな類の係争だったのだ。
とはいえジダン本人は、そうした軋轢をまったく気にしていなかった。レアルに新天地を求めるのは、彼にとってそれほど刺激的なチャレンジであった。
レアルのフロレンティーノ・ペレス会長も、過去を掘り返して彼を苦しめることはなかったし、心地よい言葉しかジダンに対して向けなかった。
ペレスにとってジダンは、銀河系軍団形成のために得た2つめの宝石だった。