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ダニエウ・アウベス36歳で叶えた夢。
母国の“心”のクラブ、サンパウロへ。
posted2019/08/13 11:50
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
AFLO
ブラジルが4大会ぶり9度目の優勝を飾ったコパ・アメリカ。「聖地」マラカナンスタジアムで主将として優勝トロフィーを掲げ、大会MVPにも輝いたダニエウ・アウベスは試合直後のミックスゾーンで、こんなやり取りを繰り広げ、猛者揃いの記者連中を爆笑の渦に巻き込んでいた。
「ダニエウ、次の仕事は何をするんだい」
「記者だね」
「おい、給料は安いぜ」
すでにパリ・サンジェルマンとの契約が満了していたこともあり「失業者」だと公言していた36歳が新たに選んだ職場は、幼き頃から憧れた母国の名門クラブだった。
ロマーリオ以来のインパクト。
8月1日、ブラジル国内で最多のクラブ世界一を誇るサンパウロは、ダニエウの獲得を発表した。クラブの公式ツイッターで映像とともにダニエウはサポーターにこう語ったのだ。
「2019年現在、僕はいかなる場所でもプレーできたが、ブラジルに戻ることを決めた。母国、ブラジル国民、そして僕の心のクラブのためだ。あり得ないことのように見えるだろう、でも僕はここにいる」
ブラジル代表の主将が選んだのはユベントスでもなければ、マンチェスター・シティでもなく、16年半ぶりとなる母国への回帰だった。
近年のブラジルサッカー界に、世界的なビッグネームが復帰するのは決して珍しいことではない。かつてはロナウドやロベルト・カルロスがコリンチャンスに移籍し、2011年にはロナウジーニョがフラメンゴに加入。そして2014年にはカカが古巣のサンパウロに出戻っている。
しかし、未だ欧州で引く手あまたである現役のブラジル代表の中心選手が、母国に戻ってくるというインパクトの大きさは1995年にバルセロナからフラメンゴへ移籍したロマーリオ以来である。