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ダニエウ・アウベス36歳で叶えた夢。
母国の“心”のクラブ、サンパウロへ。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byAFLO
posted2019/08/13 11:50
入団会見にはクラブのレジェンド、カカ(右)も駆けつけた。ダニエウ・アウベスは英雄ライーも背負った背番号10をつける。
サンパウロの英雄ライーの存在。
そしてサンパウロ側にとって追い風となったのは現在、エグゼクティブダイレクターを務めるライーの存在である。
ダニエウ同様、ブラジル代表でもキャプテンマークを巻いたライーは、ダニエウがサンパウロに魅了されるきっかけとなった1992年のトヨタカップでチームを初のクラブ世界一に導いた英雄だ。
入団会見の場でライー氏は言った。
「ダニエウ獲得における私の最大の貢献は1992年のコパ・リベルタドーレスとクラブ世界一を得たことだ」
コパ・アメリカの大会期間中、サンパウロのクラブ練習場でブラジル代表が練習した際、ライーから背番号13が入ったサンパウロのユニフォームを手渡されていたダニエウ。
大会期間中の記者会見でも「僕の心のチームはサンパウロさ」と公言して憚らなかったが、その原点は名将テレ・サンターナが率いた1990年代のサンパウロの黄金期。当時プレーしていたカフーに憧れてサイドバックに転向したダニエウにとって、相思相愛でもあったサンパウロへの移籍はある意味で必然の結果だったと言えるだろう。
「1人のサポーターと契約したんだよ」
資金力を持つ欧州クラブが幅を利かせる昨今のサッカー界の風潮に、王様ペレは2010年、こう嘆いたことがある。
「今の選手は金のためにプレーし、ユニフォームへの愛のためにプレーするのではない」
しかしながら、ダニエウは44268人のサポーターの前でキッパリと言い切った。
「サンパウロは1人の選手と契約したわけじゃない、1人のサポーターと契約したんだよ」
ダニエウに託されたのはかつてライーも背負った栄光の背番号10。旧大陸から戻ってきたカナリア軍団の主将は、愛するクラブのユニフォームをまといピッチを駆ける。