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津田学園エース前佑囲斗が完投勝利。
「誤魔化し」の出来でも大物の予感。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2019/08/07 16:30
本格派右腕として注目を集める津田学園の前佑囲斗。初戦の静岡相手に1失点完投勝利を挙げた。
不安を取り除いた佐川監督の言葉。
それでも試合前、佐川は「調子の良し悪しに関係なく投げてくれると思うので、不安はない」と自信をのぞかせていた。
「気持ちはちゃんとつくってましたから。気持ちさえ変えられれば、何とかなる」
2日前、前日と、ブルペンで軽く投げたときもまったくボールは走っていなかった。だが、佐川は時折「OK!」と声を上げ、前の不安を取り除いた。
「ここまできたら、正直、誤魔化しなんで。あとは、おまえなら、試合の中で修正できるから大丈夫だと言い聞かせていました」
次戦は強打の履正社。
その言葉通り、絶不調と言ってもいいような状態の中でも、前は最後まで冷静さを失わなかった。
「後半は体全体は疲れてきたのですが、そのぶん力が抜けて、腕は振れるようになりました。股関節をうまく使って投げることができた」
2回戦は、1回戦で大会タイ記録に並ぶ1試合5本塁打をマークした強打の履正社が相手だ。
だが「誤魔化し」で、これだけ堂々たるピッチングを見せた前のポテンシャルは計り知れない。佐川もこう期待を込めた。
「甲子園は一般市民が大スターになれる場所なので」
ホンモノの投球ができれば――。その可能性は十分にある。