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逆指名マッチのC・ロナウド欠場騒動。
怒る国民との狭間に揺れるKリーグ。
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images
posted2019/08/03 11:50
試合前はベンチに座るC・ロナウドの姿に大歓声が沸き起こっていたが……。
韓国の“オールスター戦”人気。
少し話が変わるが、約10年前のことだ。
Kリーグの“オールスター戦”を取材したのは、2008年と2009年に開催されたJリーグ選抜の「J-ALLSTARS」対Kリーグ選抜の「K-ALLSTARS」の「JOMO CUP」以来だった。
Jリーグ選抜('08年)には鄭大世、巻誠一郎、金崎夢生、中村憲剛、小笠原満男、今野泰幸、阿部勇樹、田中マルクス闘莉王、中澤佑二、楢崎正剛とそうそうたる顔ぶれ。一方のKリーグ選抜('09年)で、日本のサッカーファンになじみがあるのはMFキ・ソンヨン、MFイ・チョンヨン、GKイ・ウンジェといった選手たちだろう。
当時は両リーグを代表する選手たちの“日韓戦”とあって、個人的には楽しかったのだが、世間の関心はかなり低く、視聴率もひと桁台だったこともよく記憶している。
Jリーグ対Kリーグの対戦は2010年以降は開催されなくなったが、韓国での「オールスター戦」は形を変えて続けられていた。'10年はメッシ率いるバルセロナと対戦。'12年には日韓W杯から10周年を記念して、当時ベスト4入りした韓国代表とKリーグオールスターが対戦。今年のユベントス戦とC・ロナウドの来韓は「Kリーグのオールスター戦」というよりも、ユベントス色があまりにも濃かったが、ファンは楽しみにしていた一戦だった。
選手にとっても、ファン投票から選出された人気、実力のある選手が集ったのだから、下手な試合はできない。試合前からKリーグの選手たちを取材していたが、その意気込みは随所に感じられた。
「ロナウドが出てこないとは……」
この試合で先発出場した元Jリーガー、MFキム・ボギョン(蔚山現代)は試合後にこんなことを語っていた。
「(ファンの多くは)ユベントスとロナウド見たさにスタジアムに来ていると思います。自分たちでは足りない部分もあるかもしれませんが、ビッグクラブと対戦するので、試合を見に来ているファンのためにもベストを尽くしてプレーしようと思っていましたし、ファンには最高の試合を見せたいと思って試合に挑みました。今日は試合開始時間が遅れてしまい、とても申し訳なく思っています」
ファンに失礼のないように全力を尽くす――。
Kリーグの選手たちにとっては、ユベントスを相手に自分たちの力量を試す場にもなっただろうが、腑に落ちない部分もあったに違いない。大事なリーグ戦の最中に、ユベントスのために各クラブの主力選手が集まったのだ。厳密にいえば、コンディション調整において影響がないとは言い難い。
試合終了後、元韓国代表FWイ・ドング(全北現代)は「ロナウドが出てこないとは思っていなかった。今日、ふと頭に浮かんだことなのですが、ロナウドよりもメッシのほうが世界最高の選手だと思った」と、冗談にも皮肉にも取れるコメントを残し、スタジアムを後にした。