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<沖縄出身初のホームラン王>
中部商業・山川穂高
「日本最強スラッガーのかけがえなき原風景」

posted2019/08/04 08:30

 
<沖縄出身初のホームラン王>中部商業・山川穂高「日本最強スラッガーのかけがえなき原風景」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2009年7月6日の沖縄タイムス紙、スポーツ面。3番仲里、4番山川に盛根監督は「2人に回せば何とかなる」と信頼を寄せていた。

text by

藤島大

藤島大Dai Fujishima

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photograph by

Takuya Sugiyama

今年もすでに本塁打量産体制。オールスターで最多53万票を集めた埼玉西武ライオンズの4番は、出生地・沖縄でいかなる高校時代を過ごしたのか。当時の野球部監督と同期の3番打者を訪ねた。(Number983号掲載)

 あの飛距離に軌道。目にするたびに思い浮かぶイメージは「軽々と」ではない。

 重油。そいつが流れる感じ。ドロリ粘る液体がじんわりと進んでいく。小さくて硬く白い球は、あらかじめ、行く先を運命づけられている。だから、華やかに飛んでいるのに、ゆったりと空気をかき分けるように遠くへ消える。

 山川穂高。プロ野球、いや、スポーツを観戦する者の喜びがそこにある。チケットの値打ち。テレビ画面に目を凝らすだけの価値が。つまり、でかい。

 大聖堂の鐘の腰回り。巨壁の胸や土管の首。「つぶら」と書きたくなる目も子どもの描くバランス無視の絵のようである。もちろん本塁打の角度は、名前のまま日本アルプスの頂まで届きそうだ。

 圧倒的スケール。観客はそこに吸い寄せられる。さらに怪力の裏では、ときにアスリートの進軍をさまたげる「優しさ」が吹きこぼれそうになっている。現在進行形の英雄が、昔、学校のクラスにいた「いいやつ」にすっと重なる。

 みんな、この人が好きだ。ぶっとい腕に抱かれたら世界中の赤ん坊がたちまち泣きやむだろう。繊細なはずの心は、しつこくしつこく塗り重ねる練習によって「豪快」へと変換される。転落の恐怖と戦うおびえが相手投手の恐怖を呼ぶ。

 さあ沖縄へ。みんなが好きな人、山川穂高はどこからやってきたのか。

 宜野湾市。県立中部商業高校の応接室にいい表情があった。古い映画のタイトルにちなめば、まさに男の顔は履歴書である。

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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