“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
佐々木朗希の「160キロ」を見た。
“大谷流”を擁する花巻東にも期待。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2019/07/24 07:00
延長戦までもつれた盛岡四との4回戦で160キロを記録した佐々木朗希。準々決勝ではベンチからチームを鼓舞し、4強に貢献した。
ストレート勝負に挑んだバッテリー。
中学時代の「オール気仙」からバッテリーを組む佐々木と捕手・及川恵介でも、勝利を目の前にすると緩急よりもストレートに頼ってしまうのだろうか。
ストレートだとわかっていれば今の高校生なら160キロでも攻略できる。無死二、三塁の場面でセンター前に弾き返した横山慶人(3年)が打った球は159キロのストレートだった。
10回以降は変化球主体に切り替え、12回までの3イニングを無安打、奪三振7という圧倒的なピッチングを展開する。9回から12回で73球投げているので、もう1イニング早く緩急に目覚めていれば194球も投げなくて済んだのに……そう思うと思うと、ちょっと悔しい。
球数がどうしても脚光を浴びてしまうが、佐々木はストレートの速さとともに、投球フォームのよさに大きな特徴がある。体のどこかに変調をきたしたような素振りは見せていないので、投げ過ぎの影響はないと思いたい。それにこの試合の展開を見ていれば交代はまず無理だった。
花巻東には“大谷直系”の打撃を発見。
この試合の前日に行われた4回戦で勝利した花巻東も見応えのあるチームだった。
投手の西舘勇陽(3年)はその4回戦でストレートが最速149キロ、続く準々決勝で147キロを計測しているので、県内では佐々木に次ぐ剛腕と言っていい。投球フォームにも、早く体が開くといった“上半身主体”という弱点がなく、右打者の内角に腕を振ってストレートを投げ込むコントロールの安定感がある。
それでも花巻東で取り上げたいのは打線だ。
クリーンアップの3番中村勇真(3年・外野手)と4番水谷公省(2年・三塁手、外野手)は現在の大谷翔平(エンゼルス)とよく似たバッティングをする。大谷はバットの余計な動きを抑え、下半身は小さい始動とステップによって反動を抑え込む。ボールに差し込まれることを防ぐ狙いだが、メジャーリーガーでも難しいあのバッティングを、高校生の2人が実践していることに驚かされた。
中村は4回戦の水沢高戦で2本の二塁打を放ち2打点、水谷は準々決勝の一関学院戦で逆転2ランホームランを放ち、結果を出している。