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自衛隊に究極のストイックランナー。
本業は装甲戦闘車の指揮と運転。
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/07/23 08:05
陸上部の練習でも使うジープの前で、穏やかな笑みを浮かべる宮原徹。自衛隊最強ランナーだ。
「走ること」で伝えられること。
加速度的に高速化が進むトレイルランニングの世界。日本におけるパイオニアとして活躍してきた宮原は、これからの自分自身を、そして自らに憧れてきた後輩たちをどう見ているのだろう。
「いまの自分の目標は、何歳まで富士登山駅伝を走れるか。世界のレベルはどんどん高くなっていますから、ここから先そこで戦っていくことは並大抵ではありません。だからこそ、いま上昇してきている若い選手たちに、自分は少しでも長く背中を見せ続けたい。そして世界の舞台で活躍している上田瑠偉君のように、自分を追い越していく選手が出てほしいと思っています」
かつて宮原は、自衛官として走ることについてこう話していた。
「自衛隊の“戦技(せんぎ)”では走ることも技能として重要視しています。僕らは常に体力があることが期待されていますから、鍛えるべきところを鍛えなければなりません。そんななか、自分は走ることに力を入れています。走ることを通して、地域の方々に自衛隊をアピールすることも仕事のひとつです。やはり体力があれば皆さん安心されますから」
自衛官としての仕事や競技について語るとき、宮原の言葉はいつでもきっぱりとしている。もちろん、心のなかにはさまざまな想いや葛藤もあるのだろうが、それでも第一に自衛官であることに誇りを持ち、自分たちの役割や競技に取り組む意味を明確に捉えて臨んでいることが伝わってくる。
太田監督が話すように、「どんなに困難な状況にも打ち勝って、目標を達成する力を磨く」。それが滝ヶ原自衛隊陸上競技部の、そして宮原徹の使命なのだろう。
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