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平野佳寿がアシストした初勝利。
チームと自分を救った苦労人左腕。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2019/07/15 11:30
ヤングの初勝利を好リリーフでアシストした平野佳寿。見事な仕事ぶりだった。
評価は高くなかったヤング。
毎年、数多く選手が入団しては退団していくプロ野球だ。そんなこともあるだろうとは思っていたが、実際にその事実に突き当たると、少し驚かされる。
初登板で好投し、メジャーリーグにおける「初勝利」のチャンスを手にしながらピンチを作って降板してしまう。平野にマウンドを託したヤングも、それが最後のチャンスになる可能性は十分あった。
マイナー歴5年目で25歳のヤングは、いわゆる「Top Prospect=一番の有望株」と呼ばれるような、評価の高い投手ではなかった。
2015年のドラフト2巡目(全体43位)指名で、マイナー通算104試合(先発75)に登板して28勝25敗、防御率4.34。目立った成績は挙げておらず、今季もAAA級マイナーで20試合に登板して4勝3敗、防御率6.09と苦戦していた。
昨秋、ヤングはメジャーに昇格することなくAAA級マイナーでシーズンを終えた。その評価は「左の救援投手としてなら未来はある」というものだった。
こんな失点して、上がれるのか?
ヤング自身も、打球が飛びやすい高所に本拠地が多いAAA級パシフィックコーストリーグで悪戦苦闘しながら、こんな風に考えていたという。
「こんなにも失点して、どうやったら(メジャーリーグに)上がれるのだろうか?」
もちろん、諦めたわけではない。フライを打たれると長打になる確率が高くなってしまうことから、ヤングは2シーム・ファストボール=シンカーを武器に内野ゴロを取るピッチングを磨き始めた。
そうこうしているうちに、メジャーリーグの先発投手陣に怪我人が続出して、彼と同じマイナー球団でプレーしていた同僚たちが昇格していく。
ヤングはその欠員を埋めるために、AAA級マイナーで先発に再転向した。毎試合のように失点を重ねながらも投げるイニングが長くなったことで、7点台を超えていた防御率が徐々に改善し始めた。
その頃、メジャーリーグでは開幕から長らく先発ローテを守っていたザック・ゴドレーという投手が、先発での9試合1勝5敗、防御率8.08と不調に陥り、救援に回ることになった。