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高橋光成が初めて首を振った瞬間。
「器用な投手」の枠を踏み越える。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2019/06/30 09:00

高橋光成が初めて首を振った瞬間。「器用な投手」の枠を踏み越える。<Number Web> photograph by Kyodo News

西武が高橋光成にかける期待は大きい。今季から西口文也の13番を継承し、ここまでチーム最多の7勝をあげている。

菊池の足跡を辿り、自分を知った。

 これが菊池雄星だとそうはいかなかった。

 クイックの速さにも限界があったので、それならばたとえ走られても、二塁に走者を背負ってからギアをあげればいいと割り切っていた。ピッチングの組み立ても、ストレートで押すという絶対的な中心があった。

 若い頃は打たれていたボールが、年を追うごとに打たれなくなり、菊池は2015年に157キロを計測した。その試合に負けたことで本人は価値を認めていなかったが、2017年にはそれを更新する158キロを2度にわたってマーク。愚直なまでの真っ向勝負が、菊池の最大の武器をさらに強くした。

 今季の高橋は、驚くほどのスピードで成長を遂げている。

 それは菊池との自主トレで刺激を受け、先輩の足跡を辿りながら自己改革を図った結果だが、とはいえまだ1年目にすぎない。

「雄星さんと取り組んできて、早くからこのマインドでやりたかったなというのはあります。今まで“感覚を大事にしろ”って言われてきたんですけど、正直、自分のどこがどうなっているのか分かっていなかった。

 でも今は、開きが早いとか、崩れている部分がわかるようになりました。なんで良かったのか、悪かったのか。100%じゃないけど、答え合わせができるようになりました」

まっすぐを信じて押せるように。

 彼の器用さがプラスに出るかマイナスに出るかも、ここからの取り組み次第だろう。バレンティンに投げ込んだ渾身のストレートは、今後彼が成長するうえで1つのものさしになるはずだ。

「ストレートに信頼がないから使いづらいのかなと感じてしまって、変化球を投げている部分はあります。自分でもまだ自信を持てていないので、目先の結果を意識してしまう。まっすぐを信じて押していけるようになりたいですね」

 リーグ再開後、高橋のローテーションは週末のカード頭から平日のカード頭へと変更される。日本ハム、ソフトバンク、楽天など上位チームとの戦いで結果を求められる中で、器用さに頼るのか、スケールの大きい投手になっていけるのかが問われる。

 勝負所でこそストレートを投げる。

 その先に、彼の目標の1つ、160キロ到達が見えてくる。

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