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山を走って世界一を目指す女性研修医。
医師国家試験前の悪夢を乗り越えて。 

text by

千葉弓子

千葉弓子Yumiko Chiba

PROFILE

photograph bySho Fujimaki

posted2019/06/23 08:00

山を走って世界一を目指す女性研修医。医師国家試験前の悪夢を乗り越えて。<Number Web> photograph by Sho Fujimaki

信州上田医療センターで研修医として勤務する高村貴子。世界のレースを転戦する。

「自分で局所麻酔はできないので」

 病院にとっても、現役トップアスリートを研修医として迎えるのは初めてのことだ。

 今年は6月上旬に行なわれたポルトガル「マデイラスカイレース」(4位)と「トレイル世界選手権」を皮切りに、スカイレースワールドシリーズなど6大会の海外遠征を予定している。病院では、高村の海外遠征の希望を聞きながら、年間の研修スケジュールを調整してくれているという。

 仕事は朝8時のカンファレンスに始まり、夜7時ごろに終わる。市内最大規模の医療機関であるため、夜間の救急患者も多い。当直の日は夜中、仮眠をとりながら患者さんの処置を行い、その後、昼間の仕事を続ける。

 新しい環境にはまだ慣れていないが、早朝か夜に時間を見つけてトレーニングに励んでいる。山の近くに住んだものの、時間に追われるいまはロードランが中心だ。

 週末はひとりで近くの浅間山に練習に行ったりもするが、「慣れない山なのと、練習不足で転んで足を切っちゃって。さすがに自分では局所麻酔ができないので、ほかの先生に縫合してもらいました」とまだ新しい環境に順応している途中だ。

「学生時代より練習量は落ちているので、いまはこれまでのトレーニングの貯金を切り崩しているイメージです。距離の短いスカイレースで勝つには、スピードと度胸がカギ。そう考えると、世界一を目指せるのは30歳くらいまでかなとも思います。いま26歳ですから、あと4年。一方で、医師としては研修医としての2年間がとても重要なので、もうとにかく頑張るしかないんです」

選手に寄り添える医師になりたい。

 医師になりたいという想いは、高校時代の経験から湧き上がってきた。

「陸上部に所属していたのですが、怪我や貧血に悩まされて全然練習ができず、結局やめてしまいました。お医者さんからは休養をすすめられるだけで、走りたくても走れないジレンマでもがいていたんです。

 同じような悩みを抱える選手はきっと多いはずだから、そんな選手に寄り添える医師になりたいと思うようになりました。競技との向き合い方や治療法の提案ができるような医師になりたいなって」

【次ページ】 初めてのレースでいきなり3位。

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高村貴子

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