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伊調馨、登坂絵莉も優勝できず……。
レスリング東京五輪争いが熾烈すぎ。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2019/06/18 12:15
全日本選抜レスリング選手権大会(明治杯)で憧れの登坂絵莉(左)との初対決を制した須崎優衣。世界選手権の出場権をかけてプレーオフに挑む。
目の前で見る五輪に、涙。
続く準決勝で須崎は五十嵐未帆(NSSU KASHIWA)を5-2で撃破。登坂との一騎討ちを迎えた。リオデジャネイロオリンピックの時、須崎は有望選手の育成プロジェクトの一環で現地入り。オリンピックを初めてライブ観戦し、他の選手の試合を見て初めて涙を流したという。
当時、拙著『なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨』で取材した際、須崎はこんな感想を述べている。
「本当に凄すぎました。とくに登坂さんの試合を見て、自分もああいうふうになりたいと思いました」
当時の須崎にとって登坂は憧れの存在だった。近い将来、その憧れと対戦することになったら? と投げかけると、須崎は語気を強めた。
「東京オリンピックに出場して金を獲得するためには、登坂選手を倒さなければいけない。もっともっと努力して、もっともっと強くなって、対戦することができたら絶対に勝ちたいです」
憧れだった登坂との一騎討ち。
あれから3年、須崎は紆余曲折を経ながら夢を具現化させた。一方の登坂は潔く完敗を認めた。
「ここ1カ月くらいは調子が良くて、自分の中では絶対いけると思っていたので本当に残念。この負けを良かったと思える日は来ないと思うけど、これも現実」
リオで金メダルを獲得後、登坂は左足のケガに泣かされ続けたが、須崎もケガから復帰第一戦となった今年4月の『JOC杯ジュニアクイーンズカップ』ジュニア50kg級の部で優勝を決めた直後には人目もはばからず涙を流した。
「初めてプレッシャーを感じました。理想に現実が追いついていない」