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川崎の「左崩し」が止まらない理由。
長谷川と登里が持つ選択肢の膨大さ。
posted2019/06/17 17:00
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Getty Images
まるで将棋の「端攻め」の手筋を見ているかのようである。
一体、何の話か。
最近の川崎フロンターレで展開されている、左サイド攻撃だ。
その崩しを担っているのは、サイドハーフの長谷川竜也とサイドバックの登里享平の2人。
長谷川は164cm、登里は168cmと、どちらも小柄なタイプである。将棋で言えば、プレースタイルも、大駒と呼ばれる飛車や角行のようなタイプではない。むしろ香車のように縦のドリブル突破を繰り出し、あるいは桂馬のように守備陣を軽やかにすり抜けるタイプに近いかもしれない。
ただその連係は破壊力抜群で、毎試合のように左サイドエリアからゴールの匂いを漂わせ続けているのである。
第13節の大分トリニータ戦では長谷川が、第14節の浦和戦では登里がともにアシストを記録。直近の第15節のコンサドーレ札幌戦では、長谷川の仕掛けがPKを呼び込んだ(PKはレアンドロ・ダミアンが失敗)。得点に直結する崩しを左サイドから幾度となく作り出しているのだ。
ここ最近の川崎は、大分、浦和、そして札幌と3-4-2-1のフォーメーションの相手との試合が続いている。それぞれスタイルは異なるが、ウィングバックが最終ラインに入る5バックとなって構える守備陣形は共通点になる。
そして自陣で堅く守る相手の攻略は決して容易ではない。だが川崎の左サイドは、さほど苦にせずそんな5バックを攻略していくのである。
仕掛けの自信からすべては始まる。
崩しのメカニズムは、比較的シンプルだ。
まずはサイドハーフの長谷川竜也がタッチラインで幅を取って開き、相手のウィングバックをサイドに引っ張る。局面打開を武器にする長谷川は、ボールを持つとまずは強気に仕掛けていく。ここで自信を持ってプレーできていることが一番のポイントだと本人は言う。
「自信を持って自分が取るポジションを取れてるし、そのポジションを取ったことによって、自分が仕掛ける。そのことによって1対1でも抜けるし、2枚が来たらワンツーでもはがせる。自分の中で仕掛ける、自分が1人でも突破できるんだ、というところを見せられているのが大きいですね。
それによって相手は『こいつ、突破してくるな。パスもできるな』となったらキツいと思ってます。寄せなかったらクロスを上げられて、それが良いボールであれば、より嫌なプレーヤーになると思うので」