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川崎の「左崩し」が止まらない理由。
長谷川と登里が持つ選択肢の膨大さ。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/17 17:00
川崎フロンターレの攻撃はあらゆる場所から始まるが、その中でも登里享平は欠かせない存在なのだ。
谷口「相手を見ながらやれるのが武器」
長谷川も登里も、味方を使う側にも使われる側にもなり、局面に応じて自分をスムーズに変えることができる。狙いはシンプルでも、攻め筋を瞬時に変えられてしまうのだから、守る側からすると、たまったものではないのだろう。そうやって川崎の左サイドは優位性を作り続けているのである。
1+1のような足し算ではなく、掛け算のような組み合わせになっている関係と言うわけだ。
周囲も左サイドの優位性を生かすシチュエーションを作り出しているのは言うまでもない。最終ラインから左サイドコンビへの配給を担うことの多いセンターバック・谷口彰悟は、こんな風に語る。
「相手が食いついていれば、裏が空く。竜也がサイドに張っていれば、ノボリさん(登里)が、ふっと間に入る。それをスムーズにやっている分、僕はそこを判断すればいいだけですね。結局は、相手を見ながらやっているので。1つのストロングポイントとしてやれれば良いですし、相手を見ながらやれるのが武器だと思います」
だから、川崎の左サイド攻撃は止まらないのである。
鬼木監督が登里に寄せる信頼。
前節札幌戦の後半は、サイドで違うバリエーションを見せている。
0-1のビハインドで迎えた後半開始時に、鬼木達監督は左の登里享平と右の車屋紳太郎の両サイドバックを入れ替えたのだ。鉄板とも言える左サイドの縦関係をあえて変えた意図を、試合後の会見でこう述べている。
「ノボリとシンタロウ(車屋)のところで言うと、左は単独でも行けそうだな、と。一方で右はもう少し流動性やコンビネーションを意識して、ノボリのポジショニングと推進力で(攻撃のテンポを)上げていきたいというところでした」
登里への信頼が垣間見れる言葉である。そして指揮官の狙い通り、登里は右サイドに配置されても柔軟に対応し、攻撃を活性化。もちろん、相手守備陣に生まれたギャップを見逃さない嗅覚もある。サイドハーフの家長昭博を生かしたコンビネーションプレーを見せ、同点弾の起点としても機能している。
同時に、やや窮屈だった右サイドが躍動し始めたことで、左サイド攻撃はさらに迫力を増した。「単独でも行ける」と言う指揮官の読み通り、長谷川も猛威を振るった。両サイドの攻撃が面白いように機能し、後半は札幌を自陣に押し込み続け、放ったシュートは、後半だけで15本と圧倒している。