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バスケ日本代表、そして東京五輪へ。
ビッグマン渡辺飛勇が描く夢物語。
posted2019/06/17 07:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Yoko Miyaji
渡辺飛勇(ポートランド大)にとって、NCAA選手1年目のシーズンが終わった。それは前年にレッドシャツ選手(練習生)としてベンチから見ていたときに思っていた以上に、試練の日々だった。
何よりも辛かったのは試合に勝てなかったこと。ポートランド大は、八村塁がいたゴンザガ大と同じウェスト・コースト・カンファレンスに所属しているのだが、カンファレンス内全勝のダントツ1位でレギュラーシーズンを終えたゴンザガ大とは対照的に、ポートランド大は勝ち星に縁がなかった。
1月にWCCシーズンが始まり、2連敗が3連敗になり、9連敗が10連敗になり、結局、レギュラーシーズン16試合で1度も勝つことができなかった。カンファレンスのシーズンが始まる直前、12月の最後の試合にも負け、3月のカンファレンス・トーナメントも初戦敗退しているので、すべて合わせると18連敗だ。
自信を持てたゴンザカ大との一戦。
「毎日練習に来るのがとてもきつかった。毎試合のように大差をつけられてしまい、メンタル面で負担が大きかった。シーズン半ばには、『とにかく1勝して、そこから調子をあげていこう』と思っていたけれど、それでも勝てなくて、シーズン終盤には『1勝あげなくてはいけない』と切羽詰まった感じになった。
それでもみんな最後まで諦めることはなく、勝ちたいという気持ちを持って戦っていた。そのことは間違いない。でも、16試合負け続けるのはきつかった」
思い出すだけでも当時の重圧が戻ってくるようで、口調も重くなる。
渡辺個人にとっても、山あり谷ありのシーズンだった。開幕直後は、初めて戦うNCAAの舞台で、自分のプレーに自信を持てなかった。そのため、最初は得意なリバウンドにだけ集中しようとしていた。得点は自分の役割ではないとすら思っていたのだという。
そのなかで、自分のオフェンスに自信を持つようになったきっかけとなった試合がいくつかあった。そのうちの1試合が1月19日、八村がいるゴンザガ大と対戦したときだ。