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バスケ日本代表、そして東京五輪へ。
ビッグマン渡辺飛勇が描く夢物語。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYoko Miyaji
posted2019/06/17 07:00
NCAA1年目のシーズンは試練の連続だったという渡辺飛勇。6月からは日本代表の合宿に参加する予定だ。
渡辺に火をつけた2度目のDNP。
実はゴンザガ大と対戦する2日前の試合で、渡辺はシーズン2度目のDNP(不出場)を経験していた。最初のDNPは故障が理由だったが、このときはベンチ入りし、試合に出られる状態だったのに使ってもらえなかった。自信を失い、ヘッドコーチのテリー・ポーターと話し合いもした。
「コーチから厳しいことを言われ、それを聞いて僕も少し熱く、感情的になってしまった」と渡辺は振り返る。
「あの時は、とにかく多くの逆風が吹いていた。色々あって、前の夜はあまりよく眠れなかったぐらいだ」
もっとも、結果的にはそれが渡辺のモチベーションに火をつけることになった。
「逆境の壁が高くなればなるだけ、アンコンフォタブルで苦しくなる。とにかくコンフォタブルな状態を取り戻したかったから、いつも以上に全力でプレーした」
ダブルチームで守られるという証。
単にがむしゃらにプレーしただけではなかった。まず試合の序盤にベンチからゴンザガ大のビッグマンをじっくり見て、どんなプレーをしているのかを研究した。
「彼らがうちのビッグマン相手に何度もダックイン(ゴール近くで力強くポストアップのポジション取り)をしているのを見て、それが彼らにとって一番重要なことなのだと感じた。それで、試合に出たときに僕も、(ゴンザガ大ビッグマンの)ブランドン・クラーク相手に同じことをやってみて、得点を取った。その後、ポストムーブからも続けてシュートを決めた。その結果、ダブルチームもされたんだけれどね」と、表情にも笑顔が戻った。
ダブルチームで守られるというのは、それだけオフェンスに対して警戒されていることの証だ。シーズン序盤に、得点を取るのは自分の役割ではないと思っていたときには想像もできなかったことだった。全米ランキング5位(当時)のゴンザガ大相手、将来のNBA選手たちを相手に自分のプレーが通用したことは大きな自信になった。