酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
巨人・坂本勇人は“最強の遊撃手”になるか。
ポイントは打順と、前後を打つ丸と岡本。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/06/06 08:00
交流戦初戦では「4番」に座った坂本勇人。5日の試合ではリーグ最速となる20号本塁打を放った。
丸加入で与えられた「2番」。
なぜ、今年の坂本が「大型化」したのか。
あきらかに丸佳浩の加入が大きいだろう。長打力、ミート力、選球眼、脚力を兼ね備えた当代屈指の強打者が入ったことで、坂本への重圧は軽減された。
そして「2番」という新しい役割を与えられたのだ。
ここ5年間の坂本の打順別の打撃成績を振り返ってみる。
<2015年>
1番 9試37打10安0本3点0盗 率.270
3番 73試269打72安7本37点6盗 率.268
4番 48試173打47安5本28点4盗 率.272
<2016年>
3番 131試483打166安22本71点13盗 率.344
<2017年>
2番 2試8打3安0本1点0盗 率.375
3番 134試508打148安15本58点14盗 率.291
<2018年>
1番 92試370打136安18本60点7盗 率.368
2番 1試5打2安0本0点0盗 率.400
3番 16試66打14安0本7点1盗 率.212
<2019年> ※6月4日時点
1番 16試65打18安5本10点0盗 率.277
2番 35試141打52安14本31点4盗 率.369
4番 1試3打0安0本0点0盗 率.000
打順が多いほうが好調?
坂本は安打をよく打つだけでなく、足が速く、長打も出るバランスの良い中距離打者だ。巨人で言えば長嶋茂雄と同タイプ。NPBでは普通、こういう打者は3番に据えられることが多い。坂本も3番が多かった。
昨年は、岡本和真が4番に定着したこともあり1番を打つことが多かった。珍しく故障で戦線離脱もしたが、リードオフマンとしても好成績を上げた。
おそらく、坂本は打順がたくさん回る方が調子が出るタイプなのだろう。
今季はこれも3番打者タイプの丸が加入し、岡本も前年から引き続き4番に座ったこともあり、坂本は2番を打つことが多くなった。
伝統的な日本の2番打者は「つなぐ打者」であり、安打、長打よりも犠打、走者を進める打撃が求められる。しかし坂本勇人にそれを求めるはずもない。
原辰徳監督は、当然、MLBで定着しつつある「2番最強打者」を期待して坂本を2番に据えた。
坂本は、これをよく理解してエンゼルスのマイク・トラウト張りの打撃を見せたのだ。聡明な選手だ。おそらく、坂本は「2番」という新しい打順を気に入っていたのではないか。