ラグビーPRESSBACK NUMBER
南ア撃破に貢献した山田章仁らが選外。
ラグビー日本代表、選考の鍵は?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT
posted2019/06/05 11:30
トンガから高校時代に留学生として来日し、東海大学では主将を務めたアタアタ・モエアキオラ。今季はスーパーラグビーのチーフスでもプレー。
ユーティリティ選手が目立つ選出。
ジェセフHCの選考基準で、キーワードのひとつになるのが「ユーティリティ」だろう。
「これまでの遠征では33人だったが、W杯は31人だ。人数の制限があるなかで、複数のポジションをカバーできる選手は貴重だ」
母国ニュージーランド、日本の代表としてもW杯に出場した49歳の指揮官は、複数ポジションに対応できる選手としてCTB(センター)登録のウィリアム・トゥポウ、中村亮土、ラファエレティモシー、FB(フルバック)とWTB(ウイング)登録の松島幸太朗らの名前をあげた。
サンウルブズでアピールを続けてきたFB登録の山中亮平についても、「10番(スタンドオフ)、12番(左センター)、13番(右センター)をカバーできる。W杯では貴重な存在に成り得る。サンウルブズでもFBでいいパフォーマンスを見せている」と評価した。
驚きを呼んだ23歳モエアキオラ。
ADVERTISEMENT
ラグビーの代表チームでは、「居住3年以上」でその国のユニフォームを着ることが許される。現時点で代表資格を満たしていない選手も42人に含まれているが、ジョセフHCは「(資格を満たす)見込みがあるとしてメンバー入りしている。ここからは重要な合宿なので、解答を待つのではなくメンバー入りさせて鍛えていく」と話す。
間もなく資格を得られるひとりが、ラーボニ・ウォーレンボスアヤコだ。No.8を定位置とするこの23歳は、サンウルブズで12番や6番(左フランカー)でもプレーしてきた。ユーティリティの条件も満たしている。
42人のメンバーで、驚きを呼んだのはアタアタ・モエアキオラだろう。東海大学から神戸製鋼へ進んだトンガ出身の23歳は、'16年に日本代表キャップを獲得している。ただ、当時は中竹竜二HC代行が指揮していた。現体制では初招集となる。
彼もまた、ユーティリティ性が高い。今シーズンは神戸製鋼に籍を置きながら、スーパーラグビーのチーフスでプレーしてきた。サンウルブズと対戦した3月の試合でも、後半途中からピッチに立った。「チーフスではまずまずのパフォーマンスを見せている」とジョセフHCは見ている。
「W杯で対戦するアイルランドは、空中戦でプレッシャーをかけてくる。それに耐えられる選手、しっかりボールを処理できる選手が必要ということで選んだ」
モエアキオラと同じウイング登録の福岡堅樹とレメキロマノラヴァは、身長が180センチに届かない。バックス陣の16人で、体重が100キロを超える選手はモエアキオラを除くとトゥポウだけである。対戦相手の強みを消しながら自分たちの個性を引き立たせるために、185センチ、114キロのサイズを持つ彼が必要なのだろう。