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若乃花×武蔵丸、スペシャル対談。
先輩横綱として相撲界に思うこと。
posted2019/06/03 07:00
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Tetsuo Kashiwada
稀勢の里引退や自身の引き際について、
そして苦しかった当時の思い出……。
久しぶりに再会した2人が、
歩んできた横綱の道を縦横無尽に語り合う。
Number972号(2019年2月14日発売)の特集を全文掲載します!
――おふたりが活躍された当時、曙と貴乃花との4横綱時代を迎え、空前の大相撲ブームでもありましたね。若乃花さんは'98年7月に横綱昇進し、2000年3月に引退。横綱在位期間は2年に足らず、11場所でした。一方の武蔵丸さんは'99年7月に昇進、'03年11月に引退。同時に綱を張っていた時期は、約1年、5場所でした。
若乃花 ずっと一緒にやっていた気がするなぁ。お互いに現役時代は挨拶くらいしかしなかったよね。巡業でも、マル――今日は親方と呼びますけど――は、いつも小錦さんとアメフトのボールで遊んでいたり、大きい音で音楽を聴いていたり、「いい雰囲気だなぁ。ハワイっぽくていいなぁ」と思っていました。日本にいながらハワイを感じさせてくれていて、その姿でリラックスさせてくれていたんですよね。
武蔵丸 俺、外にばかり出てて支度部屋にいなかったもんな(笑)。
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若乃花 アメリカ文化に憧れていたから、現役時代はもっと親方と話をしたかったけど、勝負があるから情が移るのもよくないと思っていたし。こうやって今、やっと話ができるのがうれしいんです。
曙、武蔵丸、貴乃花の3人は別格。
――対戦成績は武蔵丸の24勝、若乃花の14勝でした。
若乃花 僕から見たら、曙、武蔵丸、貴乃花の3人は別格でしたよ。いつ頃対戦があるかはだいたい分かるんだけど、そこまで力を残しておかないといけなかった。親方は、まず重くて動かない。もう重たくて重たくて、本当に強かった。
武蔵丸 若乃花は逃げないで当たってくるから、やりやすかったんだ。でも小さくて嫌だったよ。よく動くから体を起こすまでに時間がかかるんだもん(笑)。
若乃花 親方は突き押しも、組むのも両方できるから一番嫌な相手だった。僕が全勝優勝できそうだった時、千秋楽で負けて14勝1敗になったのね。親方に勝ったら全勝優勝だったのに。
武蔵丸 うん、あったなぁ。
若乃花 僕は体が小さいから、考えて考えていかないと、勝てなかったんです。
武蔵丸 若乃花は技術があったね。頭付けて腰をガーッと振って、まわし切るから、もう若乃花と相撲取るの嫌になったもん(笑)。今のお相撲さんはできない技だな。