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天才・小野伸二が語った“神”たち。
山崎光太郎、中村俊輔への「すごっ」。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2019/05/31 12:45
多くの同業者が「特別」だと語る小野伸二にとっても、憧れた特別な選手はいるのだ。
俊輔のプレーは、小野でも予想できない。
続いて小野が挙げたのが、あのレフティーだ。
「シュンくん(中村俊輔)は1学年上で、高校時代に対戦したことはなかったんですけど、横浜マリノスでのプレーを見て、“すごっ”って思いましたもんね。シュンくんのプレーって、観ていてワクワクするじゃないですか。“ここにパスを出すだろうな”という予想を良い意味で裏切って、“そこか!”ってところに出せる。
そして何よりフリーキック。あれは神ですよ。蹴った瞬間に、“これ入る”ってわかっちゃう。シュンくんと一緒に試合に出ていたら、自分がフリーキックを蹴ろうなんて思わないですもん。僕だって、横で観ていたい(笑)」
ジダンの間合いはまさに「無」。
小野は日本代表として、国際Aマッチ56試合に出場した。2001年夏にフェイエノールト(オランダ)へ移籍し、加入1年目でUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)の優勝トロフィーを掲げた。対戦相手としても、チームメイトとしても、数々のビッグネームとプレーしている。その中で、最もサッカーがうまかった選手は誰か。
「ジネディーヌ・ジダン。本当のすごさを感じたし、もう、あの人の間合いには誰も立ち入れなかった。ボールを奪いに行っても、絶対に取れないと思うんです。今までそういう選手には出会ってこなかったけど、彼だけは“何を考えているんだろう”って不思議だった。“次はこうするよ”という気配を出さない。『無』な感じなんです」
きっと清水商高校時代や浦和レッズでのルーキーイヤーに小野選手と対戦した相手は、同じように「絶対に取れない」と思っていたんじゃないですか?
そんな感想を伝えると、目の前の天才は照れくさそうに笑った。
ラモスさんだけじゃなく、多くのサッカーファンが「もし怪我してなかったら、化け物みたいな選手になっていた」と思うはず。それほどまでに、今回のインタビューで小野伸二が語った「怪我をする前に見えていた光景」は、すごかった――。