武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲BACK NUMBER
武蔵丸が見た令和初の夏場所。
「朝乃山、初優勝は忘れて!」の意味。
text by
武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2019/05/29 08:00
「アメリカ合衆国大統領杯」の最初の受賞者は朝乃山に。来年以降も、夏場所の優勝者に贈られることになった。
貴景勝はしっかりケガを治してから出場を。
新大関として注目されていた貴景勝だけど、5日目から脚のケガで休場となった。
8日目から再出場したものの、翌日からまた休場してしまったんだよね。僕は再出場に大反対だったな。出たい気持ちはわかるけれど、そこは、やはり師匠が抑えなきゃいけない。ケガから2、3日経って、まずは稽古場での動きを見てから判断しないとダメだよ。
「痛みがないから大丈夫だろう」と、稽古場に下りずに、ぶっつけ本番で出るから、こういうことになる。
結局、ケガをしているのがわかると相手もやりにくいし、休場での不戦敗となると、これも迷惑になる。
再休場した日の相手は、栃ノ心だったんだ。不戦敗は、相手にとっては戦わずして白星が転がり込んで来ることになるから、「ごっちゃんでした!」と思うかもしれないけれど、ひとつの好取組がなくなってしまう。お客様に申し訳ないんだよなぁ。
高いお金を払ってわざわざ足を運んでくれ、重~いおみやげの袋まで持って帰るんだよ? あ、おみやげは関係ないか(笑)。
新大関として先が長いのだから、今は無理しないでいい。稀勢の里のいい例――いや、悪い例があるんだから。
栃ノ心の立ち合い変化はガッカリだった。
今場所の話題のひとつは、10勝して大関復帰を狙っていた栃ノ心。
ようやく14日目に10勝し、復帰を決めたね。13日目の朝乃山戦で、かかとが土俵を割っていたかどうか物言いがつき、軍配差し違えで、まさかの黒星。
悔しいのはわかるし、何が何でも10勝したかった気持ちはすごくわかる。でも、翌日に、立ち合い変化で勝ったのにはガッカリだったよ。「今の自分の持っている力を出し切って、もし復帰できなかったら、また戻れるように頑張ろう」と思って挑まなきゃ。いくら数字上の星を挙げても、自分の現在の力ではない方法で勝っては、今後の自信にはならない。また同じことにもなりかねない。
しかもこの日は結びの一番で、これまたお客様に申し訳ない……って、代わりに謝ってばかりの僕だな(笑)。