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上原浩治の制球力は日本史上最強。
置かれた所で咲いた「雑草」の花。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKyodo News

posted2019/05/29 12:00

上原浩治の制球力は日本史上最強。置かれた所で咲いた「雑草」の花。<Number Web> photograph by Kyodo News

全身を跳ねるように使いながら、驚異的な制球力でボールを投げ込む。上原浩治は本当に稀有な投手だった。

メジャーでも、何度もリーグ1位に。

 上原がすごいのは、MLBに活躍の舞台を移してからも、抜群の制球力をキープしていたことだ。

救援投手として40試合以上投げたシーズンの、上原のBB9、KBB ()はリーグ順位

2010年 BB9 1.02(1) KBB 11.00(1)  55奪三振 5与四球
2011年 BB9 1.25(2) KBB 9.44(1) 85奪三振 9与四球
2013年 BB9 1.09(1) KBB 11.22(1) 101奪三振 9与四球
2014年 BB9 1.12(2) KBB 10.00(2) 80奪三振 8与四球
2015年 BB9 2.01(15) KBB 5.22(11) 47奪三振 9与四球
2016年 BB9 2.11(15) KBB 5.73(5) 63奪三振 11与四球
2017年 BB9 2.51(19) KBB 4.17(11) 50奪三振 12与四球

 2015年からリーグ順位が落ちているが、各リーグで40試合以上投げる救援投手は毎年80人以上いる。そんな中でのこの順位なのだ。この年、上原は40歳。少しずつ衰えてはいたが、MLBを離れる年まで投球精度は一線級だった。

ペタジーニ敬遠に涙した有名なシーン。

 上原浩治が新人だった1999年、巨人の松井秀喜とヤクルトのロベルト・ペタジーニは激しい本塁打王争いをしていた。

 10月5日の神宮球場でのヤクルト-巨人戦、先発した上原は7回裏、1死無走者でペタジーニと対戦したが、ベンチは敬遠を指示。上原はこれに従ったがマウンドで涙を流し、アンダーシャツでこれをぬぐいながらボールを投げた。上原はここまでペタジーニに対して14打数無安打。完ぺきに抑えていたのだ。

「記録の神様」宇佐美徹也さんの最後の著作のタイトルにもなった有名なシーンだ。宇佐美さんはファンを置き去りにした無意味なタイトル争いを厳しく非難したが、今にして思うと上原の涙はまた別の色に見えてくる。

 NPB史上最高のコントロールピッチャー、上原浩治は、抜群の制球力で走者を封じてきた。「歩かさないこと」に精魂を傾けてきた上原にとって、この敬遠指示は身を切られるようにつらかったのだ。この年、上原は197.2回を投げて24個しか四球を出していないが、この数はさらに減った可能性がある。

【次ページ】 日本復帰後にも見せた躍動感のある投球。

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