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苦しむエスパルス、悩める鄭大世。
「今はいい時がくるのを待っている」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/05/16 11:45
J1第7節ジュビロ磐田戦で先制点を決め、雄叫びを上げる鄭大世。静岡ダービーを制した「価値あるゴール」だった。
鄭大世が話した2つのゴール。
そんなシチュエーションが鄭大世にもあった。
1つは2018年J1リーグ第30節(10月20日)、サンフレッチェ広島戦(2-0)でのゴールだ。途中出場から前半47分に決めた得点は同シーズン2点目、しかも19試合ぶりと長いトンネルを抜けた瞬間だった。
さらにもう1つ、記憶に新しいのが今季リーグ初勝利を飾った第7節のジュビロ磐田戦(2-1)だ。先発出場から自身のゴールで勝利に貢献したが、歓喜の雄たけびを上げる姿がとても印象的だった。スタメン落ちの悔しさを乗り越えた価値あるゴール。見る側にとっても、力強い鄭大世が戻ってきたと感じた試合でもあった。
「去年ゴールを決めたサンフレッチェ広島戦と今年のジュビロ磐田戦では、なおさらそういうのを感じました。絶対に1回は沈む時期はあると思うので、そこからまた復活していくところに価値があると思います。そこにはドラマがあるし、そこに人生の深みがあるという感じがするんです。
最近、そういうことに敏感というか、脆いですね。そこまでのプロセスをしっかりと見るようになりました。だからこそ、自分もがんばろうと思います。自分なんてまだたいしたことないし、まだ幸せだなと思っています」
変わらない「ガラスのハート」。
確かに鄭大世はとても繊細で情にも脆い、と思う。
彼とは20代のころからの長い付き合いになるが、自分の性格を「ガラスのハート」の持ち主と表現していたことがあった。それは35歳になった今も“いい意味”で変わっていないのかもしれない。
繊細だからこそ、他人の気持ちがよく分かる。だからこそ、ほかの選手の活躍を発奮材料にすることができるのだろう。
「自分としては引退も近づいてきているので、残りの時間をできるだけ意義のある時間にしたいんです。だから練習からすごく活気を持ってやっています。
正直、この先、何歳までサッカーができるかわからないけれども、今が幸せって思わなかったら絶対に後悔すると思います。もっとこうやっておけばよかったって、絶対に後悔すると思うんですよ。だから、今はできるだけ自分がどういう状況にいて、何が幸せで、何があるのかっていうことを1つ1つ、数えながらやっていきたいと思っています」