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苦しむエスパルス、悩める鄭大世。
「今はいい時がくるのを待っている」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/05/16 11:45
J1第7節ジュビロ磐田戦で先制点を決め、雄叫びを上げる鄭大世。静岡ダービーを制した「価値あるゴール」だった。
豊田と重なった自身の境遇。
豊田のゴールを自身の境遇と重ね合わせているのは間違いない。その想いについて聞くと、言葉が次々とあふれ出てきた。
「それは間違いありません。正直、今はうまくいってないですから。自分はうまくいっているつもりでも、なかなかそうはさせてもらっていない状況です。人生のバイオグラフィーでいったら、よくないところにいると思っていて、今はいい時がくるのを待っている感じです。少し俯瞰して自分を見る時期だとも思っています。生きているとこういうことは絶対にあることだから。
それに周りを見渡したら、自分と同じようにもがき苦しんでいる選手はいます。そういう意味では、豊田選手はすごい。鳥栖で活躍してから、韓国Kリーグの蔚山現代に行ったけれど、なかなか結果を残せずJリーグに戻ってきました。それでもなかなかスタメンで出られなかったりする中、監督交代後に先発してゴールを決めた。
そこまでのプロセスを想像すると、ものすごいドラマがあるじゃないですか」
「価値のあるゴール」とは?
鄭大世もまた、豊田のような価値のあるゴールを決めたいと常に思っている。FWとしては当然の感情だろう。
「そういうのを見ていると、自分だけじゃないんだなって思うんです。みんなにはそれぞれマラソンのような人生があって、例えばきつい時間もあるし、ランナーズハイのときもあるし、自然と足が軽いときもある。
元々、豊田選手は鳥栖のレジェンドじゃないですか。そういう選手がもがき苦しみながら久しぶりにゴールを決めたら、苦しかった時間の分だけ自分だけじゃなくて周りの人も喜んでくれる。そこにすごく価値を感じるんです」