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リンクから離れて気づいたこと。
高橋大輔「ピークはまだ先にある」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/05/01 10:00
昨年、現役復帰を表明し、リンクに戻ってきた高橋大輔。さらなる進化を遂げるべくスケートを楽しむ。
「目標は探します(笑)」
全日本後の会見で、世界選手権辞退とともに語った「まだ引退しない」という言葉については、あらためてこう明言する。
「はい。現役としてやっていきたいと思っています」
来季の目標を尋ねると、こう答えた。
「考えてはいないですね。(昨年の復帰会見も)復帰の理由は? と聞かれたから全日本が目標です、と言っただけだったくらい。大きな目標として、自分のスケートを作り上げたい、人前で常に最高のパフォーマンスを見せたい、そのために現役復帰するくらいの練習量を積んでいきたい、ということがあったので、実は目標は考えていなかったです。何か目標を探します(笑)」
1月12日、都内のイベントに出席した際、来シーズンは4回転ジャンプをショートとフリーで1本ずつ入れること、4回転トウループに加えてサルコウへのチャレンジも視野に入れていることを明かしたが、成績など具体的な計画を思い描いているわけではない。ただ、確信していることがある。
「今は、スケートに集中させてもらっている環境に感謝しているというか、すごく充実しています。何がモチベーションなのかと聞かれると何なのか分からないし、何か具体的な目標があるというわけではなくても、勝手にモチベーションが高いみたいな感じでしょうか」
高橋の新たなモチベーション。
ふと、高橋は口にした。
「ソチまでの2年間なんて、自分がもっと伸びるなんて、想像できなかった。ピークは終わってしまったんじゃないかという恐怖しかなかった。いつ終わりが来るのかな、と思うくらい、自信を持てていなかった。
でも復帰して、('08年に膝を)手術する前の4回転ジャンプはまた違いますけど、手術してから跳んでいた4回転よりも絶対に今のジャンプのほうがうまいなと思うんです。この間映像で観ていて、『あ、うまいな』と思った(笑)。ジャンプの高さ自体、アクセルをはじめ、全体的に高くなっていると思います。スピンはへたくそですけど、スケーティングも昔よりうまくなっているし、表現でも、若い頃のような演技はできなくても、今しかできない演技ができるかもしれない。いい成長をしているという感じがあります。
そういった意味では、まだ自分にはピークは来ていないかもしれない。だから、全力で進んでいきたいですね」
そこまで話すと、はっと気づいたように、にこりと笑った。
「そうか、それがモチベーションなんですね」
Number970号(『[独占インタビュー]高橋大輔「ピークはまだ先にある」』より)