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盟友・フェルナンデスから羽生へ。
世界選手権後にかけた言葉とは。
posted2019/05/11 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
JMPA
「あと20分待ってくれる?」
筆者のスマートフォンの画面に、英語でそうメッセージが入ってきた。10時から電話インタビューの約束をしていたハビエル・フェルナンデスからだった。
ラテン気質のためなのか、約束の時間よりも15分くらい遅れるのは毎回のことだった。でも忙しくても、疲れていても、面倒くさそうなそぶりは決して見せずにいつも取材に応じてくれる、ありがたいフェルナンデスである。
今回とりわけ申し訳ない気分だったのは、他の媒体の依頼で彼に電話取材をしてからまだ1カ月もたっていないためだった。
しかも今度のテーマは、平昌オリンピックの羽生結弦選手との戦いについて。
2度世界タイトルを手にし、平昌オリンピックで銅メダルを獲得したフェルナンデスはスペインのスポーツ史に名前を残す偉業を遂げた。
しかし、日本のメディアは「羽生結弦のトレーニングメイト、ライバル」としての切り口で、彼の口から少しでも羽生の知られざる側面を聞きだそうとする。他の選手の感想ばかり聞かれていたら、いい加減嫌になってしまうだろうな、という引け目はどうしても感じてしまう。
「今、大丈夫だよ」
そういうメッセージが入ってきたので、こちらから国際電話をかけた。
日本でのアイスショー公演の合間の電話取材。
「Hi,how are you?」
いつもの、ちょっと舌ったらずのチャーミングな英語が聞こえてきた。
「今はまだ日本?」
「金沢だよ。明日が最後の公演なんだ」
「スターズ・オン・アイス」に出演するために、埼玉開催の世界選手権の日程の直前に日本に行くということは、前回のインタビューで聞いていた。だが世界選手権の会場には行けるかどうかわからない、と言っていたフェルナンデス。結局、日本では顔を合わせる機会もないまま、筆者はニューヨークの自宅に戻ってきた。
だがフェルナンデスはそれからずっと、日本に滞在し続けていたのだという。
「これまで何度も聞いたことだけれど、平昌でのユヅルとの戦いのことを改めてお聞きしたいの。同じような質問の繰り返しになって申し訳ない」
「うん、大丈夫だよ」
こういう大らかな優しさは、おそらく愛情豊かな家庭に恵まれたフェルナンデスの育ちの良さなのだろうと思う。
平昌オリンピックでの話をたっぷりと聞かせてもらい、その詳細はNumber本誌に掲載のとおりだ。