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トッティ2世と噂の19歳ザニオーロ。
放出インテルが「大失敗」とため息。
posted2019/04/24 10:00
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Uniphoto Press
「トッティの後継者」と呼ばれるようになって、誰よりも戸惑っているのは彼自身かもしれない。
ニコロ・ザニオーロ。
誰? という読者の反応の方が圧倒的に多いだろう。今季がセリエAデビューイヤーの19歳。身長190cmと体格はすでに立派なフットボーラーだが、表情にはまだティーンエージャーらしさを残している。
イタリアの首都を本拠地とする名門クラブのローマで、絶対的なシンボルとして長年君臨してきたのが42歳となったフランチェスコ・トッティだ。セリエAにデビューした16歳からローマひと筋のキャリアを送り、2017年夏に40歳で現役を引退した後もディレクターとなってクラブに残る。
トッティのような“スプーン”。
トッティとザニオーロの比較論をよく耳にするようになったのは、おそらく2018年の年末からだ。ザニオーロが昨年12月26日のサッスオーロ戦で記録したセリエA初ゴールは、たしかに現役時代のトッティを彷彿とさせる妙技を含んだものだった。
右サイド最前線のタッチライン付近で加速しながらボールを持ったザニオーロは、ゴールに向かって利き足の左足でドリブルしながら斜めに進む。背後から追走してくるディフェンダー1人を引き連れながらだ。
目的地に接近したザニオーロは、ゴールエリアの角あたりで急停止しながら切り返し、追走してきたディフェンダーをオーバーランさせる。そこからが圧巻だった。シュートを打つふりをするキックフェイントを入れたのだ。
オーバーランから戻ったディフェンダーも、GKも、このフェイントによって尻餅をつかされる。体勢を完全に崩した2人は、ザニオーロが左足でボールをすくい上げるようにして放ったシュートの放物線を見上げることしかできなかった。
人を食ったかのようにも映るこのフィニッシュ、イタリア語で言うところのクッキアイオ(スプーン)は、トッティの十八番のひとつだったのだ。