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リバプール悲願のタイトル奪取へ。
鍵を握る「ハマン」的な仕事人MF。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byGetty Images
posted2019/04/15 11:15
04-05シーズン、ミランとのCL決勝。途中出場で「奇跡」と呼ばれた逆転勝利に貢献したリバプールのディートマー・ハマン。
実は中足骨を骨折していた。
その後にリバプールはミランの猛攻に晒される。しかし、CBジェイミー・キャラガーが足を何度も痙攣させながら魂の守備を見せれば、守護神イェルジ・デュデクがアンドリー・シェフチェンコの決定的なシュートを2度に渡ってスーパーセーブ。ミランに勝ち越しゴールを許さず、勝負の行方はPK戦に委ねられた。
この特大の重圧がかかる場面で、ハマンは一番手の大役を全うした。なにより凄まじいのは試合中に中足骨を骨折していたことだ。
それほどの重傷と知らなかったベニテスは「最初に行けるか」と問いかけ、ハマンはただ頷いた。後に続く4人のキッカーが誰かさえも知らなかったという。自身に課されたタスクを黙々とこなす、職人肌のハマンらしいエピソードだろう。
ジェラードは後年、ハマンをこう称えている。
「彼がいてくれたから、前に出て行って、ゴールを奪い、チャンスメイクもできたんだ。僕の守備的な仕事を全部やってくれていたよ」
ゲーゲンプレッシングが基本戦術の現チームに、当時のような攻守分業の意識はない。とはいえハマンのように黒子役に徹してくれるファビーニョの存在は頼もしいかぎりだろう。
昨季までCLを3連覇したレアル・マドリーにも、やはりカゼミーロという縁の下の力持ちがいた。プレミアとCL制覇を目指すリバプールの“陰のキーマン”はファビーニョ。そんな気がしてならない。