プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・丸佳浩は“偉大なるメモ魔”。
マル秘の「丸ノート」、実践と効用。
posted2019/04/12 15:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
「三振をしてもいいとは思っていないですけどね……」
巨人・丸佳浩外野手はニヤリと笑った。
「でも、狙い球を絞って打席に立っています。その球を打席では最後まで待ちますね」
この会話の発端は、筆者と井端弘和元巨人コーチとのある会話だった。
「丸の数字を見ていると、僕はかなりヤマを張って待つタイプのバッターだと思うんですよ。追い込まれても『三振してもいい!』くらいの感覚で、ずっとそのボールを待ち続ける。そうでなければあの数字は出ないと思います」
こう語って井端元コーチが指摘したのが昨年、丸が記録したいずれもリーグ最多となる130四球、130三振という極端な数字だった。
丸の1つの特長が選球眼の良さと言われる。その裏付けとなるのが130個の四球というわけだ。ところが不思議なのは、選球眼がいいはずなのになぜ130個も三振を喫しているのか、ということだ。その背景を、井端元コーチは、狙い球を絞って、かなり割り切った感覚でその球をずっと待ち続ける、すなわち“ヤマ張り”だ、と分析しているわけである。
打席で絞ったボールを待ち続ける。
追い込まれたらまっすぐのタイミングで変化球に対応しようとするか、まっすぐと変化球を半々のタイミングで待つ打者がほとんどである。
ところが丸の場合はそうではないのだ。
打席で絞ったボールを待ち続ける。そのボールがくれば思い切って強く叩けるし、少しでも甘く入れば、長打にできる。ずっと1つの球種を待ち続けているから、ボールの見極めは良くなる。その代わり、追い込まれてもそのボールを待ち続けるので、違う球種だとど真ん中でも見送って三振を喫するケースがある。
開幕の広島戦で大瀬良大地投手に4三振を喫した最後は、ど真ん中の真っ直ぐを見送ったものだった。
まさにそれこそが丸だ、と井端元コーチは言うわけだ。