マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
センバツより上手い二塁手がいた。
九州にプロスカウトが集まる理由。
posted2019/04/07 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
3月30日の熊本・藤崎台球場に11球団のスカウトが足を運んだのは、プロ注目のドラフト候補がいっぺんに顔を揃えるからだった。
有明・浅田将汰投手の他にも、熊本工の好左腕・林彪太郎(3年・176cm75kg・左投左打)、九州学院の140キロ右腕・蒔田稔(3年・180cm81kg・右投右打)、快足・強打の川野涼多遊撃手(3年・178cm73kg・右投両打)に強肩強打の友田佑卓捕手(174cm75kg・右投左打)、城北・西田暁登右翼手(179cm75kg・右投左打)……。
この日1日でスカウトの仕事が済みそうなほどの豪華さだったのだ。
九州学院・川野遊撃手が、ベースを離れた二塁ランナーの背後にピッタリと立つ。本当に体を密着させているようにも見える、いいプレッシャーだ。
これをされるとランナーは動けず、リードに入るタイミングが遅れる。送りバントの二塁ランナーを三塁で刺そうという場面でこのけん制をされると、二塁ランナーはスタートが苦しい。
去年の夏予選、四国のあるショートが“これ”をやったのを、ある場所で書いたことがある。九州学院・川野遊撃手、もしかして読んでくれたのか……。欲をいえば、ポジションに戻るタイミングが一瞬早い。彼ぐらい動きにスピードのある選手なら、投手がモーションを起こすまで、あともう一瞬“じゃま”してみせてほしい。
2年生の時から非凡な存在だった。
川野遊撃手を初めて見たのは、ちょうど1年前のこの県大会だ。
次に自分たちが戦う試合をする相手が、目の前で試合をしていた。九州学院の面々はスタンドから対戦相手を見ていたのだが、7回が終わって試合の準備にほかの選手たちが立ち上っても、ただ1人じっと動かず試合終了まで観察を続けていたのが、当時2年生になったばかりの川野遊撃手だった。
その試合の彼は、左打席からライトポール際や右中間にライナー性のきれいな弾道で伸びる打球を飛ばしていた。