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川内優輝のプロ転向は、なぜ今?
「オンリーワンのプロランナーに」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyoto Shinbun/Kyodo News Images
posted2019/04/08 08:00
3月の「びわ湖毎日マラソン」が公務員ラストランとなった川内。プロランナーとして活躍に注目したい。
希望に満ちた決断に驚きの声も。
それは周囲の驚きをも生んだ。
これまで、誘いがあっても市民ランナーであることにこだわってきたのに、なぜ今、という声もあった。30歳を超えたところで公務員という比較的安定した職を捨てることに、意外と感じる向きもあった。
そんな声をものともせず、プロとなった川内の言葉は希望に満ちていた。
4月2日、アシックスとのアドバイザリー契約発表会見に出席し、「頭の中で思い描いていてもできなかったことを、これから実現できると思うとわくわくしています」とコメントしている。
これからは競技中心の生活に。
川内は、大学も駅伝の強豪校に籍を置いたわけではない。卒業後は、働きながらのトレーニングだった。
その中で活躍することができたのは、制限のある環境での創意工夫にほかならないが、見方を変えれば、年中、競技を中心にする、競技に集中する状況にはなかったことも示している。
今回、プロになったことで、思う存分、競技を生活の中心に据えることができる。
そうした環境は、今までに経験していない。だからこそ、練習時間や走行距離も含め、新たな取り組みを行なうことができるし、今までにない将来を築くこともできる。公務員という安定は捨てることになるが、ランナーとしての可能性は広げられる。そう思えばこその、希望にあふれた言葉だろう。