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スールシャールがマンU正式監督に!
ルーニーや現役MFも「当然」と賞讃。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2019/04/02 18:30
ここ数年、相次ぐ監督交代で停滞感が漂うマンチェスター・ユナイテッド。名門復権へ、ファーガソンの教え子が正式に名乗りを上げた。
「本当の試練の始まり」
もっとも、今後が楽観視されているわけではない。実際には「本当の試練の始まり」という記事が多かった。
「ノー・モア・ミスター・ナイス・ガイ」との見出しで伝えたのは『デイリー・ミラー』紙。スールシャールの正式監督就任は、結果の積み重ねによる「成果」でしか評価されない立場になったともいえる。「監督の前に『暫定』が付く肩書きが、どうもしっくりこなかった」と微笑んでいたが、消えた2文字の代わりに、大事なシーズン終盤戦にして、はるかに大きなプレッシャーを背負うことになったのだ。
このタイミングでの発表に異論を唱えるつもりはない。就任決定前の代表ウィークは、クラブがスールシャール体制下での変化を改めて振り返る良い機会となったはずだ。祖国ノルウェーに一時帰国していた本人も、今季終了後の身の振り方を落ち着いて考えることができただろう。
バルセロナとのCL準々決勝、マンC、チェルシーとの上位対決を控えるラスト2カ月を前に、チームとファンの士気を盛り上げる効果も期待できる。
苦しんだ船出は「新時代の夜明け」。
とはいえ、今季終了を待たずに下された決定に疑問の声がなかったわけではない。代表ウィーク前のアーセナル戦(0-2)、FAカップ準々決勝ウォルバーハンプトン戦(1-2)で、初の連敗を喫したことが主な理由だ。
それでも正監督の船出となった2週間後のワトフォード戦(2-1)は白星で飾られた。得点者はラッシュフォードとアントニー・マルシャルで、いずれも前掛かりになった相手後方のスペースを突いたカウンターからだった。
とりわけ、左SBルーク・ショーが相手のパスをカットし、自陣内から一気に通したスルーパスに走り込んだラッシュフォードがネットを揺らした先制点は圧巻。後半にマルシャルが押し込んだ追加点は、リンガードとアンドレアス・ペレイラの両MFによる連係や、ラッシュフォードとのワンツーも絡めた軽妙な攻撃だった。
ただし、チーム全体の出来は良くなかった。
守護神ダビド・デヘアに数度のセーブを強い、ワトフォード相手に劣勢の時間が長かった。スールシャール自身も「相手のクオリティを認めないといけない」と語っている。だが、「出来が悪かった日だが試合には勝った」と続けたくだりを、「これぞマンU」と解釈できる勝利でもあった。苦しみながらも勝利した一戦を受け、BBCのニュースは「マンU新時代の夜明け」と伝えていた。