フランス・フットボール通信BACK NUMBER
世界中を旅したさすらいのドイツ人GK。
その波乱万丈の蹴球人生を追う。
posted2019/04/03 15:00
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph by
Bernard Papon/L'Equipe
『フランス・フットボール』誌が「冒険者たち」という全10回の連載を現在おこなっているのは、ロベルト・ノタリアニ記者によるジョルジョ・キナーリャの原稿をすでに本欄で紹介している(NumberWeb3月18日配信)から皆さんもご存じだろう。
その連載第7回で取り上げられているのがルッツ・プファーネンシュティールである。選手としてはほとんど無名。彼が異彩を放つのは、FIFAの統括するすべての大陸サッカー連盟(AFC、UEFA、CAF、CONCACAF、CONMEBOL、OFC)に所属するクラブでプレーした経験を持つからである。その数は実に25にも及ぶ。
ドイツのツウィーゼルに生まれ、現在46歳になるプファーネンシュティールが辿った数奇な運命をフランク・シモン記者がレポートする。
監修:田村修一
GKとして死にかけた事故も。
ルッツ・プファーネンシュティールこそは、FIFAに所属するすべての大陸連盟のクラブでプレーした経験を持つ世界でただ1人の選手である。国境を越えたその半生は、想像を絶する波乱に満ちている。
その一撃は、まるで電気ショックのようでさえあった。
ハロゲート・タウンのストライカー、クレイトン・ドナルドソンは、シュートコースを塞ぐべく突進してきたゴールキーパーに怯むことなく、膝から相手の胸に思いきりぶつかっていった。
GKの名前はルッツ・プファーネンシュティール。
イングランド8部リーグのブラッドフォード・パークアベニューに所属していた。2002年12月26日、ボクシングデーの試合での出来事である。
激突の瞬間に、プファーネンシュティールの呼吸が止まった……生死の境を彷徨っているように見えたプファーネンシュティールは、いったん覚醒したもののその後2度にわたりさらに気を失ったのだった。
スタッフの適切な処置により最終的に事なきを得たが、すでに10年以上にわたり世界中を旅していた彼が、その生涯を閉じていても決しておかしくはないほど大きな事故だった。