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“新元号”初の関取、遅咲きの彩。
愛弟子の昇進に元寺尾の声も弾む。 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byKyodo News

posted2019/03/30 09:00

“新元号”初の関取、遅咲きの彩。愛弟子の昇進に元寺尾の声も弾む。<Number Web> photograph by Kyodo News

新十両昇進が決まり、錣山親方(右)と握手を交わす彩。「諦めないで良かった」とコメント。

弟は兄に、兄は弟に感謝する。

 その後の阿炎は、長い手足を駆使して土俵狭しと動き回る、幕内の人気力士となる。殊勲インタビューではピースサインをしたり、「お母さんに電話するんで、もう帰っていいですか?」との仰天発言が飛び出たりと、その手足のように、のびのびとしたキャラクターが微笑ましい阿炎だ。

「阿炎の性格は、うらやましいところもあるけれど、彼は彼なりにいろいろ考えてもいるのを知っています。いつもしょーもないことばかり言って笑わせるんですけど、本当に僕らの緊張がほぐれる。先場所もそうでした。自分は本場所で緊張するタイプなんですが、取組前に話し掛けてきて、緊張をほぐしてくれた。近くにいてくれて、ありがたかったです」

 そう、弟弟子の存在に感謝する。そしてこの彩は、部屋にとって、なくてはならない存在でもあると師匠はいう。

「彩がいるから、若い衆がまとまっているんです。兄弟子とも仲良く、新弟子とも遊んでやってくれる。彩がいて阿炎がいる、阿炎がいて彩がいる――。2人はうちの部屋のムードメーカーでもあり、この2人がいるからこそ、若い衆たちがみな仲良くやってくれているんですよ」

稽古場では彩のほうがずっと強い。

 さらに師匠は、饒舌に愛弟子を評すのだ。

「阿炎は本場所であり得ないほど強いんだけど、逆にあり得ないほど弱いのが、彩だったんです。稽古場では、阿炎よりも彩のほうがずっと強いんですよ。すでに幕内で戦えるくらいの実力がある。本当に、気持ちの問題だけだったんですね。気持ちが優し過ぎるところがあって、何回か座禅を組みに連れていったくらいです。

 基本は突き押し相撲ですが、阿炎はひらりひらりと動くタイプ。彩は突っ張って突っ張って相手を押し込んで、外に出すタイプ。同じ突き押しでも、彩には、阿炎にはない長所がある。今までは、はたきぐせがあったけど、この1年でなくなってきたし、突っ張る手が、よく回るようになってきました。十両は2場所くらいで通過してほしい。すでにそれくらいの力があるんですから」

【次ページ】 師匠冥利に尽きる昇進。

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