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“新元号”初の関取、遅咲きの彩。
愛弟子の昇進に元寺尾の声も弾む。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2019/03/30 09:00
新十両昇進が決まり、錣山親方(右)と握手を交わす彩。「諦めないで良かった」とコメント。
師匠冥利に尽きる昇進。
傍らの師匠の言葉を受け、彩は「そのつもりでいきます」と顔を引き締めた。愛弟子の、コツコツと稽古し、諦めない真摯な姿を見守り続け、この晴れの日を迎えた師匠。嬉しさが逸ったのだろうか、30分以上も前に会見場に現れ、開始予定時間より15分も前倒しで記者会見が始まったほどだ。
「彩は新元号初の関取になるんですよね。うちにはまだ若い衆がたくさんいるんで『苦労して関取になった彩みたいな例があるんだ』って、これからも教えていきたいですっ」
――おいおい、どっちが新十両力士やねん? とツッコミを入れたいほどに目を輝かせ、声を弾ませる師匠。まさに「師匠冥利に尽きる昇進」でもあったのだろう。喜びを隠しきれない師匠のその一言一句を、緊張気味の愛弟子は、しみじみと噛みしめる。
浪速の地で遅咲きの桜が一輪、色濃く花開いた。