One story of the fieldBACK NUMBER
殿堂入りした名伯楽・権藤博が説く、
「プロ野球は中4日で20勝」理論。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/28 17:00
指揮官としては「選手の自主性を重んじる放任主義」だった権藤博氏。ただし、その指導法の裏には綿密な野球理論があった。
憧れていたのは大エース・稲尾和久。
当時、権藤が憧れていたのは、西鉄の大エース・稲尾和久だったという。権藤が35勝したシーズン、稲尾はプロ野球タイ記録となる42勝を記録した。
権藤「こっちはなんとか稲尾さんに近づきたいと思っていたけど、ダメだった。全然、力が違うな。俺はこんなもんか、という気持ちだった」
つまり、今では信じられないあの権藤の数字は「稲尾」と「40勝」というさらなる高みを見ていたからこそ残ったものだったという。
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だからこそ、権藤は現代において「20勝」を追求していくことの重要性を説くのだ。先発投手の向上心と、誇りを保つための指標である。
「中4日であれば、ほぼ万全でいけるんです」
権藤「今は中6日、中5日での登板だから、年間、多くて30試合も投げられない。それだったらちょっと勝ち運に恵まれなければ、もう20勝には届かなくなってしまう。肩は消耗品だから、イニングや球数を制限するというのはわかるけど、だったら、中4日でまわれば、登板数が増えて20勝できる確率は上がるわけでしょう」
先発投手はもっと投げるべきだ、と言っているのだが、決して根性論ではない。
権藤「私は、ピッチャーは中4日で100球投げるより、中6日で150球を超えて投げる方が、ダメージは大きいと思う。監督やコーチをやってきた中で何気ない会話の中で、投手にヒアリングもしてきたしね。
例えば先発した翌日に『お前、明日も投げるか?』と聞くと、『いえいえ……』となるけど、2日後に同じことを聞くと『うーん、どうですかねえ……』になって、3日後に聞くと『いけないことはないです』となる。
自分の経験からも投手の体というのは中2日で投げられるようにはなるんです。3日あけば回復する。それで心を回復して、気持ちを戦いに持っていくためにあと1日。中4日であれば、ほぼ万全でいけるんですよ」