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隣の兄ちゃん・田澤純一の挑戦。
「結果が出ても上がれないのがフツー」
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/03/20 10:30
メジャー直行を選ぶ選手が増えてきた今、田澤純一の注目度はさらに上がっている。彼は後進に夢を与える存在なのだ。
結果と幸運に恵まれる必要がある。
「試合で使う球はサボテンのマーク(アリゾナでのオープン戦=通称カクタス・リーグ公式球のロゴマーク)が入ってるけど、練習のは入ってないんですよ。だから、だいぶ違うんじゃねーかなと思うんです」
真面目で大人しいイメージと、隣の兄ちゃん風のコントラスト。言わば「緊張と緩和」。それは今の彼が過去にないほど、厳しい状況に置かれていることで、今まで以上に絶妙なバランスの上に成り立っているように見える。
厳しい状況――。
マイナー契約の田澤は、単に「結果」を出すだけではメジャーリーグに生き残れない。ベンチ入りの25人枠に入るためには、他の誰かが怪我をするか、去年の田澤のように誰かが不調で自由契約となり、25人枠が空くような「幸運」も必要になってくる。
メジャーリーグにはそういう選手が数え切れないほどいて、彼らはキャンプ招待選手として「開幕メジャー」を当面の目標としている。その目標を達成できなければ、マイナー契約をし直して同じ球団のマイナーでチャンスを待つか、再びフリーエージェント(FA)=自由契約となって、他球団で出直しすることになる。
「結果を出しても上がれないとか、フツー」
田澤はしかし、その逆風ですら「厳しい」と思っていないようだ。
「自分にどうにもできないことを考えたって、仕方ないんじゃないすか?」
隣の兄ちゃん、ではなく、真面目で大人しいイメージそのままの田澤が言う。
レッドソックスのマイナー時代、「結果」を残しながらもメジャーに欠員が出るまで昇格できなかった。他の誰かが「幸運」を掴むところも、嫌ほど見てきた。
そんな経験を数え切れないほどしてきただけに、田澤はある意味、とても「打たれ強い」。
「結果を出しても(メジャーに)上がれないとか、そんなのフツーなんで。それに文句を言ってる選手もいるけど、言ったところで上がれるわけじゃないですから。だったら自分のやれることをやってくしかない」
それに今の田澤にとっては、もっと大事なことがある。
「(勝負に)行くところと、慎重になるところをもっと掴みたい。今は気持ち的に、まだまだいけるのかなと思うけど、打たれ始めるとまたボール、ボールってなってしまうんで、そこは難しいところかなと思う」