メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
隣の兄ちゃん・田澤純一の挑戦。
「結果が出ても上がれないのがフツー」
posted2019/03/20 10:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
ナイトゲーム明けのキャンプ地の朝は、普段より少し、閑散としている。
3月9日土曜日、シカゴ・カブスはその日、スプリット・スクワッド=地元と敵地で2試合同時開催の日だった。全体練習はキャンセルされ、試合に出ない選手たちにとっては、自主トレーニングの日となった。
例年よりも雨の多いアリゾナだ。せっかくの抜けるような青空がもったいない。ただし、こんな日でも投手陣は試合に出なくても入念にトレーニングを行い、体のケアをする。彼らは先発ならば中4日、救援ならば中2日で調整してきたため、「やるべきこと」に集中している。
この日も彼らは、ベースボール・フィールドに挟まれた広大なアップ場に出てきて、キャッチボールを行い、ウエート・トレーニングルームで汗を流した。
外での動きがなくなったのは、午前11時前後だろうか。そろそろ、こちらも引き上げようかというタイミングで、タオル片手に姿を現したのはJunichi Tazawa=田澤純一だった。
「気になるところ、とかじゃなくて」
マイナー契約の招待選手としてメジャーリーグのキャンプに参加している田澤は、その時点でオープン戦2試合に登板し、いずれも無失点に抑えていた。
田澤は誰もいなくなったアップ場を抜け、その向こう側にある無人の投球練習場=ブルペンに歩いていった。もちろん、シャドーピッチングのためだ。
マウンドの傾斜の低い方から高い方へ。田澤は胸と両足をガバッと開いて、腰の位置を低くキープしながら、しっかりと体重移動をして、腕を振り続けた。
「気になるところ、とかじゃなく、確認です」
練習後、田澤は言った。額から汗が流れ落ちる。
たしかに、右投げ投手にとっての軸足である右足に体重がきちんと乗っているかどうか、股関節が使えているかどうかを気にする投手は多い。
「いや、こっち(前足)。前が高い方が動きがどうなってんのか、分かりやすいんです。ちゃんと使えてなければ、うまく投げる動作ができないんで」
素人には正直分からんなー、と思いつつも、観察だけはする。