草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
今もなお語り継がれる「与田の18球」。
監督初戦は因縁深きベイスターズ。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2019/03/14 11:15
現役時代にバッテリーを組んだ中村コーチと練習を見守る中日・与田監督。選手としては新人時代の31セーブが、最も数字を残したシーズン。
ルーキーのデビュー戦で乱闘寸前!?
田代を投ゴロに打ち取り、横谷彰将、宮里太は連続空振り三振。
17球連続ストレートで、うち13球は150kmを超えていた。社会人時代の最高球速が147kmだったのだから、プロのマウンドと雰囲気により潜在能力が覚醒したのだろう。
第1球のフォークも含めて、まさしく「与田の18球」。
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田代の投ゴロの際には本塁に突っ込んだ三塁走者が、中村にタックルした。それを見た与田は、中村そっちのけでエキサイト。「この野郎、ウチの大事なキャッチャーに何をするんだ!」と吠えかかっていた。
両軍から監督、選手が出てきて乱闘寸前までいった。繰り返すがルーキーのデビュー戦。「あっぱれ」をあげたくなる投げっぷりである。
<自分でも何かわからない。不安と期待が入り混じったなかで、体内の「何か」が変わった。アドレナリンが大量に分泌したとでもいうのだろうか。言葉では何といっていいかわからないが、自分のなかに確実に変化が起きた。>
ファンの心をつかんだ与田の投球。
著書にもあるように、与田はこの試合を境に変わった。
闘争心を前面に押し出す投球スタイルは、当時の星野野球にもぴたりとはまり、ナゴヤ球場に足繁く通うコアなファンの心をわしづかみにした。
なお、このデビュー戦は11回裏終了時に降りしきる雨のためコールドゲームとして成立している。
12回もマウンドに上がるつもりだった与田は、引き分けという結末に「グラブを叩きつけて怒った」そうだ。