テニスPRESSBACK NUMBER
連覇逃した女王に明るい表情。
目が離せない“なおみ劇場”は続く。
posted2019/03/13 18:15
text by
吉谷剛Tsuyoshi Yoshitani
photograph by
AFLO
快進撃の始まりとなった地、インディアンウェルズに大坂なおみが戻って来たが、BNPパリバ・オープンの2連覇は4回戦でベリンダ・ベンチッチに阻まれた。3-6、1-6と、スコアの上では完敗だったが、意外にも大坂の表情は明るかった。
「このスコアだと落ち込んで悲しくなるものだけど、今は気分はいい。ベストを尽くし、後悔はない。試合を通して前向きに戦うことを心がけたし、彼女が素晴らしいプレーをした。私にできることはもうないぐらいだった」
同じ1997年生まれで、ジュニア時代は全仏オープンやウィンブルドンのジュニアタイトルを取った元天才少女を素直にたたえた。大坂の言葉に月並なお世辞の意味合いは含まれてはいなかった。左手首のけがから復活して再びトップ10に返り咲こうとしているベンチッチの挑戦を正面から受け止め、押し切られた。女王らしい潔さが表情からうかがえた。
“3番練習コート”は大坂なりの配慮。
大坂を取り囲む状況がかまびすしい中で、2連覇が懸かるこの大会は始まった。
4大大会2連勝での世界1位急浮上、電撃的なコーチ交代、ディフェンディングチャンピオンとして臨む初めての舞台。落ちついて練習に取り組むことさえ難しい中で、大坂はあえて数百人のファンが観戦できる3番の練習コートで毎日、汗を流した。
それは彼女なりの最大限の配慮だった。
大会前のイベントで大坂は大勢のファンに取り囲まれてサインを求められ、去年までの自分とは立場が変わったことを痛感した。かつて自分が子供の頃にあこがれの選手へ抱いていた尊敬の念。
10数年の歳月を経て、21歳になった今、自分が子供たちからあこがれの対象になっていることへの驚き、喜びを心から感じた。