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西岡良仁は男子テニス界の個性だ。
身長170cmでトップ100という自負。
posted2019/03/14 17:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
錦織圭が逆転負けを喫し、大坂なおみまで完敗し、ダブルスでも誰もいなくなっている中、日本選手で最後に生き残ったのは西岡良仁だった。
カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されているBNPパリバ・オープン。『ATPマスターズ1000』と『WTAプレミアマンダトリー』の男女共催大会だ。
波乱相次ぐ今大会で、世界ランク74位の西岡は1回戦で同65位のデニス・クドラを破ると、2回戦では今年の全豪オープンでもベスト8入りした第21シードのロベルト・バウティスタ アグートとのラリー戦を7-6(3)、6-4で制した。
3回戦では、第9シードのステファノス・チチパスを破ってきた大会最年少の18歳フェリックス・オジェアリアシムに6-7(2)、6-4、7-6(5)の逆転勝利。18歳とはいえ193cm/88kgの立派な体格で、さまざまなショットを繰り出す完成度の高いパワーとテクニックを兼ね備えた選手だ。
「粘って粘って、最後にチャンスを作るというポイントの取り方が僕の原点」と言う西岡は、170cmの小さな体でその持ち味を駆使していつのまにか観客を味方につけるのが常だが、この一戦ばかりは、スター性抜群のニューフェイスを相手に完全なアウェーを強いられた。
勝因は、乗り越えてきた壁の数、試されてきた個性に対する揺るぎなさではなかっただろうか。
ベスト8を目指したが背中痛。
マスターズ初のベスト8進出をかけた相手は、ラッキールーザーとしてのチャンスを生かして勝ち上がってきたセルビアのミオミル・ケツマノビッチだった。世界ランク130位の19歳は西岡にとってさほど難しい相手ではなかったはずだ。
しかしコートに入ってからのアップ中に突然背中に痛みを感じたという西岡は、第5ゲーム後にトレーナーを呼んでマッサージなどを受けるなどし、目に見えて苦痛をつのらせた。4-6で第1セットを失い、第2セット最初のポイントで相手のフォアのウィナーをただ見送り、そこでようやく棄権を決断した。
もっと早い判断でも良かったはずだ。しかし痛み止めを喉に流し込み、たった1ポイントのため第2セットのスタートラインに立った行動に、無念と未練がにじむ。初のマスターズ8強がかかったコートを簡単に去ることはできなかった。