ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
W杯優勝に導いた3人に引退通告。
過渡期を迎えるドイツ代表とレーブ。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byUniphoto Press
posted2019/03/13 11:30
ミュラー、ボアテンク、フンメルスへ代表引退を通告したドイツ代表。停滞感が漂う風潮を覆せるか、EURO2020予選でのレーブ監督の手腕に注目したい。
クローゼは36歳、ポドルスキは31歳まで……。
コバチ監督とキミッヒがフォローするように、ミュラー、フンメルス、ボアテンクは現在好調だ。レーブから構想外を言い渡された4日後のブンデスリーガ第25節のヴォルフスブルク戦では、ミュラーが1ゴール・1アシストを決め、フンメルスとボアテンクは手堅い守りで完封勝利(6-0)に貢献した。
ドイツ代表がまもなくスタートするEURO2020予選で苦戦するようなら、やはり彼らが必要という待望論が巻き起こるのは必至だ。
今回の決定が「理不尽」(フンメルス)と思わせる理由は他にもある。
かつてミロスラフ・クローゼやルーカス・ポドルスキは、クラブでの出番が少ない時も構想外とはならず、前者が36歳、後者が31歳までドイツ代表に尽くし、最後はみずから引退を決断した。彼らより若くして引退を強要された3人は一時期のスランプを脱し、バイエルンでキレのあるプレーを見せている。不満が募るのは当然だろう。
精細を欠いたネーションズリーグ。
後継者が育っていなかったクローゼとは違い、ミュラー、フンメルス、ボアテンクの後釜候補が台頭しているのは事実だ。ミュラーの前線なら、ティモ・ベルナー、レロイ・サネ、セルジュ・ニャブリの快足トリオが、フンメルスとボアテンクのCBは、アントニオ・ルディガー、マティアス・ギンター、ヨナタン・ターら複数のタレントがワールドクラスの仲間入りを果たそうとしている。
では、どうしてマヌエル・ノイアーはOKなのか。'17年に左足中足骨を骨折して以来、かつての凄みを取り戻せていない。3月で33歳となる彼のすぐ後ろには、マルク・アンドレ・テア・シュテゲンが控えている。世代交代が必要なら、ノイアーにも別れを告げるのが筋ではないか。
レーブが批判も覚悟の上で、今回の決断を下した背景にはUEFAネーションズリーグ2018-19での惨敗があるだろう。ドイツはオランダ、フランスと同居したリーグAのグループ1で最下位に終わり、リーグBへの降格が決定。ミュラーとボアテンクはロシアW杯に続き、このコンペティションでも精彩を欠いた。前者は攻撃を停滞させ、後者はオランダが誇る若きアタッカー陣のスピードにまるでついていけなかった。
唯一、全4試合にフル出場したフンメルスの出来は悪くなかったが……、レーブの構想から外れてしまった。