ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
W杯優勝に導いた3人に引退通告。
過渡期を迎えるドイツ代表とレーブ。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byUniphoto Press
posted2019/03/13 11:30
ミュラー、ボアテンク、フンメルスへ代表引退を通告したドイツ代表。停滞感が漂う風潮を覆せるか、EURO2020予選でのレーブ監督の手腕に注目したい。
思い起こされるバラックの例。
彼らへの人情味に欠ける仕打ちは、ミヒャエル・バラックのケースを思い出させる。
'10年の南アフリカW杯直前に重傷を負った元キャプテンは、怪我が癒えた後に代表復帰を望んでいたものの、その願いは叶わなかった。バラック抜きの若きチームがW杯で躍動し、レーブに「不要」と見なされたからだ。さらに、そのスポーツ面の理由に加え、フィリップ・ラームをはじめとする多くの選手が彼の威圧的かつ権威主義的な態度に嫌悪感を抱いていたのも「代表追放」の決定打になった。
バラックほどではないにせよ、3人にも似たような部分があったかもしれない。例えば、ミュラーは自身の起用法が悪化すれば、監督批判などでチームの雰囲気を悪くすることを厭わない。バイエルンではカルロ・アンチェロッティやコバチに噛みついた。後者にケチをつけたのは厳密にはミュラー夫人だが、クラブOBで現解説者のローター・マテウスは「そういう声が出るのは家で話しているから」と苦言を呈していた。
この不満分子になりかねない性格が、同じタイミングで追放とならなかったノイアーやトニ・クロースとの違いだろう。
真価が問われるレーブ体制。
とはいえ今回の件で、風当たりが強まっているのはレーブだ。
スポーツ的な決断を尊重する声はあるものの、代表OBのディトマール・ハマンなども「タイミングが悪い。切るならW杯直後だった」と口にしている。
通算100キャップ(38ゴール)のミュラー、同70(5ゴール)のフンメルス、同76(1ゴール)のボアテンクという重鎮3人との決別が、ドイツ代表の停滞に歯止めをかけるか。
まずは3月20日に控える国際親善試合のセルビア戦、その4日後に挑むEURO2020予選のオランダ戦に要注目だ。