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「日本の筋トレ」と歩んだ34年・前編。
五輪、リー、マドンナが与えた影響。
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph byAFLO
posted2019/03/17 11:00
マドンナの鍛え上げられた身体は、女性の美的感覚を大きく揺さぶるエポックだった。
フィットネスクラブが徐々に安価に。
私がフィットネスクラブに入会した'85年あたりから、いよいよ日本にもフィットネスの時代が到来する。バブル景気の花咲く気配がたちこめてきた時代だ。
都心には、入会金が百万円を超えるような高級フィットネスクラブが登場し、金満バブル紳士や淑女を誘った。ただ、この手のハイソクラブの大多数は、経営が行き詰ってバタバタと閉鎖の憂き目にあう。
どれだけ設備が豪奢であっても、それは筋トレ効果に直結はしない。黄金のジャグジー風呂よりも、古びて錆びた鉄塊のほうが筋肉育成には有効なのだ。
チェーン展開のお手頃価格のクラブの台頭も、高額クラブを駆逐する要因となった。「ノーチラスクラブ」「エグザス」なんぞがその嚆矢といえよう。「セントラルスポーツ」「ルネサンス」「ティップネス」もしかり。
こちらは月会費1万5千円が相場。入会金も徴収したが後に形骸化し実質無料となる。やがて会費もダンピング合戦となり、今や1万円より安価なゾーンで標準化している。
私も青山三丁目にあった「エグザス青山」のメンバーとなった。このビルには、ようよう一般的な知名度の高まりつつあったナイキのオフィスが入っていたし、青山通りを挟んだ向かいには「ノーチラスクラブ」があった。
ジャズダンスとエアロビクスの時代。
ただ、フィットネスのスターはジャズダンスとエアロビクスだった。
ワンレンやソバージュ、BIGIに49AVなんてDC ブランドで決めたギャルがハイレグウエアに着がえ、スタジオで汗と脂粉の香りをまき散らす。
彼女らはクラブにとって貴重な撒き餌でもあった。オンナのいるところオトコがついて回る。ナンパと水着同然の女体を鑑賞できるとあって、フィットネスクラブには不埒な男子どもが押しよせた。
フィットネスクラブは都会のターミナル駅前に出店する積極策をとり、メンバーはギャルを中心としたヤングが多かった。本来、スポーツは才能と努力の融合で花咲くものながら、カッコよさとかファッショナブルという方面が幅をきかせていた。
それにしても。エアロビにジャズダンス、ヤング、ギャル……今じゃことごとく死語だもんなあ。