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「日本の筋トレ」と歩んだ34年・前編。
五輪、リー、マドンナが与えた影響。
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph byAFLO
posted2019/03/17 11:00
マドンナの鍛え上げられた身体は、女性の美的感覚を大きく揺さぶるエポックだった。
マドンナの鬼気迫る腹筋。
「フィットネス=ギャル=エアロビ」の公式が不文律だった'80年代、マドンナがその輝けるシンボルとなった。そして、'90年代へと時代をシフトさせる原動力ともなる。
マドンナは'83年に「ラッキースター」とか「ホリデー」なんて曲がスマッシュヒット。この頃はコケティッシュかつ可憐さも残していたのに、どんどこスターダムをのし上がると共にフィットネスに打ちこみ、スパルタンな肉体へと劇的な変化を遂げる。
マドンナの初日本公演は'87年、ジャパンツアーは、もう取り壊されてしまった大阪球場からだった。
マドンナの衣装は娼婦風のコルセット&ストッキング、レオタードと過剰にセクシャルだった。だが、そこにはもう、デビュー当時の、ちょっとナンパでも的な風情は消え失せ、鬼気迫る身体をアピールしていた。
四肢は引き締まり、腹筋が割れ、気軽に声をかけようものなら思いっきりビンタを見舞うような女子に変貌したのだ……。
私はそのアンドロイドにも通じる人工的な身体美に口をポカンとさせていた……。
マドンナのフィットネスへの傾倒ぶりは、日本のみならず、全世界のギャルにもショックを与えた。当時「筋肉女子」なんてコトバがあったのかどうか(あっても人口に膾炙はしてなかったと思う)。
でもマドンナのおかげもあって、脂肪の少ない“スレンダー&マッチョ”な体形が理想になった。同時に、フィットネスに紐づいていたダイエットを過剰にクローズアップさせることにもなる。
これは世界的なトレンドになった。
現在、女子アスリートにとって、腹部を露出させたセパレートウエアは普通のこと。「女も腹筋!」の源流はマドンナにある、と愚考する次第なのだ。